近年、企業が扱うデータ量は爆発的に増加しており、データを正しく分析してビジネス上の意思決定に役立てることが重要になってきています。そんな中、マイクロソフトが提供する「Power BI」は、データの可視化やダッシュボードの作成に大変便利なBIツールとして広く利用されています。本記事では、Power BIを使ったヒストグラムの作成方法について、丁寧に解説していきます。
ヒストグラムとは?
ヒストグラムとは、数値データを一定の範囲(ビン)ごとに区切り、各範囲に含まれるデータの件数(頻度)を棒グラフで表したものです。連続した数値データの分布状況を把握するためによく使用され、以下のような目的に役立ちます。
- データがどの範囲に集中しているのかを一目で把握できる
- データの偏りや外れ値(極端に大きい・小さい値)を発見しやすい
- 製品やサービスの品質管理、売上の分析など、さまざまな分析シーンで利用可能
例えば、製品の検査結果で誤差がどの程度発生しているか、顧客の年齢分布がどのようになっているかなど、連続または数量的なデータの分析では、ヒストグラムは非常に有用です。
Power BIでヒストグラムを作成するメリット
Power BIでヒストグラムを作成することで、以下のようなメリットがあります。
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直感的な可視化
Power BIのビジュアルを活用することで、分布の状態がひと目でわかり、意思決定に活かしやすい。 -
動的なインタラクション
フィルターやスライサーを使い、条件や時系列などを切り替えながらリアルタイムで分布の変化を確認できる。 -
レポート共有のしやすさ
作成したレポートは、Power BI Serviceなどを通じてWeb上で共有可能。社内外のステークホルダーと共通の可視化を参照しながら議論ができる。 -
カスタムビジュアルの活用
Power BIの標準ビジュアルだけでなく、Microsoft AppSourceからカスタムビジュアルを追加することで、より多彩なデザインのヒストグラムや分布図を実現できる。
ヒストグラム作成の前に:データの準備
ヒストグラムを正しく作成するためには、まずは元となるデータが整備されていることが重要です。以下の点に留意しましょう。
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数値データが存在する列を特定する
ヒストグラムは連続値や数量的な値を扱います。「売上金額」「在庫数」「顧客の年齢」など、数値データの列を確認します。 -
データクレンジング
- 欠損値(NaNや空白など)があれば、除外するか平均・中央値などで補完する
- 外れ値が大きく分析を歪める場合は、削除や別途扱い方を検討する
- テキストデータの形式が数値として認識されるように変換を行う
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データの範囲を確認する
ヒストグラムを作成するときは、データの最小値や最大値がどのあたりかを把握しておくと、最適なビンサイズ(クラス幅)を設定しやすくなります。
【方法1】Power BIの「ビン」機能を活用してヒストグラムを作成する
ステップ1. データをPower BI Desktopに取り込む
- Power BI Desktopを起動する。
- 「データを取得」からExcelやCSV、データベースなど、使用したいデータをインポートする。
- 「クエリの編集」画面で、必要に応じてデータクレンジングや型の変更を行う。
ステップ2. ビンを作成する
ヒストグラムを作成するためには、数値列を一定の幅で区切った「ビン」列を用意します。
- レポートビューで「フィールド」ペインを確認し、ヒストグラムを作成したい数値列を右クリック。
- 表示されるコンテキストメニューで「新しいグループ」を選択。
- 「グループの作成」ダイアログが開いたら、「ビン」のオプションが表示されるので、そこに必要なビンサイズ(クラス幅)を入力する。
- 例:5刻みでビンを作りたい場合は「ビンサイズ」を5に設定
- 「グループの種類」が「ビン」であることを確認
こうして作成したビン列は、数値データを区間ごとにまとめたカテゴリ列のように扱われます。
ステップ3. ヒストグラムを作成する
- レポートビュー右側の「ビジュアル化」ペインから「縦棒グラフ(もしくは横棒グラフ)」を選択。
- 作成したビン列を「軸(カテゴリー)」、元の数値列や件数を示すフィールドを「値」へドラッグ&ドロップする。
- グラフの表示形式を整える。縦軸にデータの件数(または集計)を取ることで、ヒストグラムの見た目になります。
- 値として「件数」を用いる場合は、数値列をドロップした後、フィールドの集計方法を「個数(Count)」に変更する。
ステップ4. デザインを調整する
Power BIではビジュアルの色やフォントサイズ、ラベルの表示などを柔軟にカスタマイズできます。
- ビジュアルを選択した状態で、右側の「形式」ペインを開く。
- データカラーを変更したり、データラベルをオンにして数値を表示したり、軸のラベルをわかりやすい名前に修正するなど、見やすいデザインに整える。
- 必要に応じて「凡例」を非表示にしたり、タイトルを変更するなど、利用目的に合わせて最適なレイアウトに仕上げる。
【方法2】カスタムビジュアルを活用したヒストグラム作成
Power BIには標準でヒストグラム専用のビジュアルは含まれていませんが、Microsoft AppSourceから「Histogram」などのカスタムビジュアルをインストールすることで、より細かい表現が可能になります。
ステップ1. カスタムビジュアルの追加
- 「ビジュアル化」ペインの「…(省略記号)」ボタンから「Microsoft AppSourceからインポート」を選択。
- AppSourceの検索バーに「Histogram」などキーワードを入力。
- リストから目的のヒストグラムビジュアルを選択し、「追加」または「インポート」ボタンをクリック。
- レポート画面に戻ると、新しいビジュアルのアイコンが追加される。
ステップ2. ヒストグラムビジュアルの設定
- 追加されたヒストグラムビジュアルをレポートキャンバスに配置する。
- 数値列を「Values」や「Axis」などビジュアル特有のフィールドへドラッグ&ドロップする。
- ビン幅やビンの数など、ビジュアル固有のプロパティを調整して、最適な分布の見え方を追求する。
カスタムビジュアルのメリット
- インタラクティブな機能が充実していることが多い
- デザイン性に優れ、ユーザーフレンドリーな設定オプションを備えている場合が多い
- 標準ビジュアルと同様に、他のフィルターやビジュアルと連動可能
一方で、カスタムビジュアルの動作やサポートは提供元に依存する場合があります。企業での利用ポリシーやITガバナンス上、外部カスタムビジュアルの使用が制限されているケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
ヒストグラムの分析活用のコツ
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外れ値の扱いに注意
ヒストグラムの棒が極端に片側に大きく出てしまう場合は、外れ値が原因かもしれません。外れ値を別データとして取り扱ったり、あらかじめ除外したりして、正しく分布を評価することが大切です。 -
ビン幅の調整
ビン幅が大きすぎると、分布の細かい特徴が見えにくくなり、逆にビン幅を小さくしすぎると棒の数が増えすぎて全体を把握しづらくなります。分析目的に合わせて、適切なビン幅を見つけることが重要です。 -
集計メジャーの選択
Power BIでは「平均」「合計」「個数」「最大値」「最小値」など、さまざまな集計方法が選択可能です。ヒストグラムの場合、多くは件数(Count)や頻度(Frequency)を使うため、「個数」を選ぶケースが多いですが、分析の目的によっては別のメジャーを使うことも検討してください。 -
セグメント分析と組み合わせる
スライサーやフィルターを使い、特定の条件(期間、地域、製品カテゴリなど)で絞り込んだときに分布がどう変わるかを観察することで、より深いインサイトが得られます。
ヒストグラム作成後のおすすめレポート設定
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ダッシュボードへのピン留め
Power BI Serviceを使って、作成したヒストグラムをダッシュボードにピン留めすることで、重要指標とあわせて常に最新の分布情報をモニタリングできます。 -
定期的な更新スケジュールの設定
データソースをクラウドやオンプレミスゲートウェイと接続し、データセットの更新スケジュールを設定することで、常に最新のデータを基にヒストグラムが表示されるようになります。 -
チームや組織への共有
レポートを組織全体に共有したり、特定のユーザーだけに閲覧権限を与えたりする設定が可能です。データの分布状況を共有しながら定例ミーティングや意思決定に役立てましょう。
まとめ
Power BIでヒストグラムを作成することで、データの分布状況や偏りを可視化し、ビジネスにおける重要な意思決定をサポートできます。標準のビン機能でも十分活用できますが、カスタムビジュアルを導入すれば、さらに高度な表現も可能です。データをきちんと準備し、ビン幅や外れ値の扱いに注意しながらヒストグラムを作成することで、業務に役立つ洞察が得られるはずです。
ヒストグラムはあくまで「分布」を捉えるための1つの可視化手法に過ぎませんが、組み合わせるビジュアルや分析手法を工夫することで、多面的にデータを理解できるようになります。Power BIが持つ強力なダッシュボード機能や、インタラクティブな絞り込み機能を活用し、効率的に分析を進めてみてください。
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