はじめに
MicrosoftのPower BI Embeddedは、外部のWebアプリや自社のサービスにPower BIのダッシュボードやレポートを組み込めるサービスです。
この記事では、Power BI Embeddedの仕組みから導入方法、料金体系、活用事例、そしてよくある疑問まで、わかりやすく丁寧に解説します。
1. Power BI Embeddedとは?
■ 概要
Power BI Embeddedは、Microsoftが提供するアプリケーション組み込み専用のBIサービスです。
■ 通常のPower BIとの違い
項目 | Power BI(Service) | Power BI Embedded |
---|---|---|
対象 | 社内ユーザー | 顧客向け・外部ユーザー |
利用形態 | クラウド上(SaaS) | アプリケーションへの組み込み |
認証 | Azure AD | Azure AD+カスタム認証対応 |
ライセンス | ユーザーごと(Pro/Premium) | 容量ベースの料金(容量×時間) |
2. どんなことができるのか?
■ 主な機能
- アプリ内にインタラクティブなレポートを埋め込む
- ユーザーごとに閲覧可能なデータを制御
- Power BIのフィルターやスライサーがそのまま使える
- APIを利用してダッシュボードの動的な生成や更新が可能
■ ユースケース
- SaaSアプリにデータ可視化機能を追加
- 顧客向けポータルでのレポート提供
- 店舗や事業所ごとの業績レポート
- 顧客ごとにカスタマイズされたデータ表示
3. 仕組みとアーキテクチャ
■ 全体像
Power BI Embeddedのアーキテクチャは以下のように構成されます。
データソース(SQL, Excel, etc) → Power BI Service → Azure Power BI Embedded Capacity → Webアプリケーション
■ 認証の流れ
- WebアプリがAzure AD経由でトークンを取得
- トークンを使ってPower BI APIにアクセス
- Embed URLを取得
- レポートをアプリ内のiframeに表示
4. 利用に必要なもの
■ 必須アカウント
- Azureアカウント
- Power BIアカウント
■ 必須サービス
- Power BI EmbeddedのCapacity(容量)をAzureで購入
- Power BI Serviceでレポート作成と公開
■ 技術スキル
- フロントエンド:HTML, JavaScript
- バックエンド:Node.js, Python, .NET など
- Azureの基本知識
5. 料金体系
■ 課金モデル
利用時間ベースの従量課金。Azureの「Power BI Embedded Capacity」のSKUに基づく。
■ 主なSKUと価格(目安)
SKU | コア数 | メモリ | 料金(目安) |
---|---|---|---|
A1 | 1 | 3 GB | 約11,000円/月(1時間約15円) |
A2 | 2 | 5 GB | 約22,000円/月 |
A3 | 4 | 10 GB | 約44,000円/月 |
A4以上 | 大規模 | 大規模 | 企業向け |
■ Power BI Proとの違い
- Power BI Pro:ユーザーごとの月額料金
- Power BI Embedded:リソース(容量)ごとの時間課金
6. 導入手順
■ ステップ1:AzureでCapacity作成
- Azureポータルにログイン
- 「Power BI Embedded」を検索
- 容量(A1〜A4)を選択
- リソースグループとリージョンを設定しデプロイ
■ ステップ2:Power BIでレポート作成
- Power BI Desktopでレポートを作成
- Power BI Serviceにパブリッシュ
- ワークスペースをPremium容量(Embedded)に割り当てる
■ ステップ3:アプリケーションへの組み込み
- Power BI REST APIを使ってEmbed Tokenを発行
- iframeでレポートURLを埋め込む
- JavaScript SDKを利用し、フィルターやインタラクションを制御
7. よくある課題と解決策
課題 | 原因 | 解決策 |
---|---|---|
コストが高い | 容量が大きすぎ or 24時間稼働 | 必要な時間だけ稼働、A1から始める |
認証が複雑 | Azure ADとアプリ認証の理解不足 | サンプルコード活用、公式ドキュメント確認 |
表示が遅い | 容量不足 or データモデルが重い | データモデルの最適化、容量を上げる |
モバイル対応が不十分 | 埋め込みのUI設計が不適切 | Power BIのレスポンシブデザイン活用 |
8. 実際の活用事例
- SaaSベンダー: クライアント企業ごとの営業レポートを自動提供
- 金融業: 顧客ごとの投資成績や運用状況をポータルサイトに可視化
- 製造業: 各工場の生産データをリアルタイムでWeb上に表示
9. ベストプラクティス
- 最初はA1容量からテスト
- ユーザー認証は「サービスプリンシパル」か「マスターアカウント」で設計
- APIのエラーハンドリングをしっかり実装
- アプリ側のUI/UXを意識(モバイル対応も)
10. まとめ
Power BI Embeddedは、自社アプリケーションやWebサービスに強力なデータ可視化機能を組み込めるサービスです。
内部利用ではなく、外部ユーザーにレポートを提供したい場合に最適。
Azureの料金体系を理解すれば、コストを最小限に抑えた運用も可能。
APIやSDKの活用で高いカスタマイズ性が実現できます。
セミナーで学ぶ!DAX 関数の実践スキル
箱ひげ図をはじめ、Power BIを使いこなすうえで欠かせないのがDAX関数の知識です。DAXをしっかり学ぶことで、データの前処理から複雑な指標の算出までスムーズにこなせるようになります。そんなDAXとデータモデル設計を効率よく学習できるハンズオンセミナーを開催しています。
もし困り事があるなら、まずは無料相談を
「Power BI で箱ひげ図を使って詳細分析をしたいが、データモデルやDAX設計が複雑でわからない…」「Power Automate を併用してデータ更新フローを自動化したいが、どこから手を付ければいいのかわからない」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
私たちは、Power BIやPower AutomateなどのMicrosoft製品の導入・運用支援、およびデータ活用コンサルティングを行っています。
-
具体的な設定や開発代行
-
社内教育のための伴走型支援
-
有料プランへの移行タイミングやROIの判断支援
など、さまざまなニーズに合わせたサービスをご用意しています。まずはお気軽に「無料相談」へお申し込みください。下記のリンクからお問い合わせいただけます。
🔰 Power BIハンズオンセミナー初級編
-
短時間でデータモデリングの基礎を身につける
-
実務にすぐ活かせるレポート作成を実践形式で学ぶ
-
少人数制なので、つまずきポイントを都度フォロー
🚀 Power BIハンズオンセミナー中級編
-
DAX関数 × データモデル設計 の実践的なノウハウを習得
-
複雑な分析要件にも対応できる応用力を身につける
-
即戦力として業務効率アップや社内評価向上に直結
👉 詳細はこちら
DAXをしっかりマスターすると、箱ひげ図のような高度な可視化においても、必要なデータを柔軟に加工・集計できるようになります。結果的に、組織全体のデータドリブン化をリードできる存在となり、キャリアアップにも大いに役立ちます。
コメント