パワークエリと DAX 関数を使い分けよう!データ前処理から高度な分析までの流れを徹底解説

Power BI を活用してデータを分析する際、しばしば戸惑うのが「パワークエリ (Power Query)」と「DAX 関数」の使い分けです。どちらも Power BI におけるデータ処理の重要な要素ですが、その役割や使いどころは大きく異なります。本記事では、パワークエリと DAX 関数の基本、具体的な活用例、そしてどのように使い分ければよいかについてわかりやすく解説します。


パワークエリ (Power Query) とは?

パワークエリとは、Power BI の「クエリエディタ」を通じて データの前処理(ETL: Extract, Transform, Load)を行うための機能です。主に以下のような作業に向いています。

  1. データの取り込み
    Excel や CSV、データベース、クラウドサービスなど、さまざまなソースからデータを取得する。

  2. クリーニングと整形

    • 不要な列や行の削除
    • データ型の変換 (文字列 → 数値、日付など)
    • 数値や文字列の分割・結合
    • データのマージや集計
  3. 自動更新の設定
    Power BI サービスと連携している場合、パワークエリで行ったデータ変換がスケジュールによって自動実行されるため、常に最新の整形後データをレポートに反映できる。

パワークエリの言語:M 言語

パワークエリのバックエンドでは、M 言語と呼ばれるスクリプト言語が動いています。ユーザーは普段、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を通じて操作しますが、ステップが蓄積された結果として内部で M 言語が生成されます。


DAX 関数とは?

一方、DAX (Data Analysis Expressions) は Power BI のデータモデル上で計算を行う ための数式言語です。具体的な用途としては、次のようなものが挙げられます。

  1. 集計や計算列、メジャーの作成

    • SUM や AVERAGE、COUNT といった基本的な集計だけでなく、CALCULATE・FILTER などを用いた条件付き集計も可能。
    • 日付テーブルと連携して売上推移や前年同月比を算出するなど、ビジネス分析に特化した機能が充実。
  2. フィルターコンテキストの操作

    • スライサーやチャートを操作した時の「コンテキスト」(ユーザーがどの範囲・条件を見ているか) を DAX 関数でカスタマイズできる。
    • 特定の地域や製品カテゴリのみを対象にした計算、全社合計との比較などを実装しやすい。
  3. 高度な分析と Time Intelligence

    • SAMEPERIODLASTYEAR、DATEADD、TOTALYTD などの時系列分析用関数が豊富。
    • テーブル全体をフィルタリングする FILTER 関数や、フィルター解除を行う ALL などの操作によって、きめ細かい集計ロジックを構築できる。

パワークエリ vs. DAX:それぞれの役割

「パワークエリ」と「DAX」の大きな違いは、処理のタイミング目的 です。

項目 パワークエリ (Power Query) DAX 関数
タイミング データを取り込み、レポートに読み込む に適用される レポートにデータを読み込んだ に計算を行う
役割 データの前処理・整形 (不要行削除、列分割、マージなど) 分析ロジックの実装 (集計、フィルター、計算列)
言語 M 言語 DAX (Data Analysis Expressions)
処理結果 新しいテーブルまたは列が生成され、モデルに保存される レポートやビジュアルのコンテキストによって動的に変化する値
メリット – データを軽量化・整理してから読み込める
– 定期更新が容易
– フィルターコンテキストの操作が強力
– 多様な集計が可能
注意点 – 複雑な操作は M 言語の知識が必要
– 大規模データでは更新時間が増える
– フィルターコンテキストの仕組みを理解しないと混乱しやすい

どう使い分ける?

  1. 前処理はパワークエリで
    データ型を整えたり、不要列を削除、テキスト整形などはパワークエリが得意分野。データ量が大きい場合は、早い段階で不要データを排除しておくほど、後の処理やデータモデリングが軽快になります。

  2. 分析ロジックは DAX で
    たとえば、「前年対比」「特定条件付きの売上集計」など、レポート上で 動的に変わる数値の算出 は DAX の強み。スライサーや相互フィルターとの連動も、DAX のフィルターコンテキストを理解すれば柔軟に行えます。

  3. 計算列 vs. カスタム列 (パワークエリ)

    • 計算列 (Calculated Column) は DAX を使い、データモデル内で演算した結果を行ごとに保存します。
    • カスタム列 (Power Query) は M 言語を用いて、取り込み前に列を追加します。
    • どちらも同じようなことができる場合がありますが、集計に直接関わらない列の作成や大量のテキスト処理などはパワークエリで済ませておくほうがデータモデルをシンプルに保てます。

具体例:一連の流れ

シナリオ

「売上データ (CSV) に製品リスト (Excel)、顧客マスタ (データベース) を組み合わせて、前年同月比を分析し、営業チームへレポートを共有したい。」

  1. パワークエリでの操作

    • CSV, Excel, データベースからデータを取得。
    • 不要な列(テスト用データなど)を削除。
    • 顧客マスタと売上データをマージして「顧客属性列」を追加。
    • 製品リストの情報を結合し、カテゴリ名などを付与。
    • 日付列が文字列の場合は日付型に変換。
    • 「売上 = 単価 × 数量」など基本的な演算列を作成。
  2. DAX による分析ロジック

    • レポートビューやモデルビューに移動。
    • カレンダー テーブル (Date テーブル) を用意し、売上テーブルと日付で関連付ける。
    • DAX メジャーを定義:
      DAX
      Total Sales = SUM('Sales'[SalesAmount]) -- 合計売上
      Sales Last Year = CALCULATE([Total Sales], SAMEPERIODLASTYEAR('Date'[Date]))
      YoY Growth = DIVIDE([Total Sales] - [Sales Last Year], [Sales Last Year])
    • スライサーで「エリア別」「カテゴリ別」に絞り込むと、前年対比が動的に変化する。
  3. レポートを構築し、共有

    • DAX メジャーを使ったカードビジュアルや棒グラフ、折れ線グラフなどを配置。
    • フィルターやスライサーを使って、ユーザーが自由に分析できるようにする。
    • 権限設定、ワークスペース管理、アプリ公開で組織・チーム内に共有。

パフォーマンスとメンテナンス性を意識したコツ

  • パワークエリ側で可能な変換はなるべくパワークエリに任せる
    大量データの整形を DAX で行うと、レポートの閲覧時に毎回計算が走りパフォーマンスが落ちる場合があります。前処理はパワークエリで完了させておくと、後の処理が効率的です。

  • DAX メジャーはシンプルに、再利用しやすいように作る
    多数のメジャーが複雑に依存するほど、更新やトラブルシュートが難しくなります。なるべくネーミングルールを整え、分かりやすく保ちましょう。

  • 使わない列やテーブルは読み込まない
    データモデルに不要な列やテーブルがあると、メモリ消費や計算負荷が増大します。パワークエリで削除するか、クエリを無効化するなどして最適化することをおすすめします。


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まとめ

パワークエリ (Power Query) は、データを取り込む前段階での整形・加工が得意で、DAX (Data Analysis Expressions) は データモデルに取り込んだ後の分析・集計ロジック が強みです。

  • パワークエリ:不要データの除去、型変換、列マージなどの前処理
  • DAX 関数:レポート上で動的に変化する集計や、フィルター操作、時間知能などの高度な分析

この役割分担を正しく理解し、効率的に使い分けることで、Power BI を最大限に活用できます。ぜひ本記事を参考に、今後のレポートや分析に生かしてみてください。複雑な要件やデータ構造に頭を抱えている場合は、無料相談やセミナーで専門家のアドバイスを受けるのも有効です。

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