Power BI ツールチップページで“読ませる”分析に:作り方と設計のベストプラクティス

レポートを見せるだけなら、グラフを並べれば成立します。けれど、ユーザーが本当に欲しいのは「その数字が何を意味し、次に何を判断すべきか」です。そこで効くのが、Power BI のツールチップページです。ホバーした一瞬に、必要な背景・比較・理由の手がかりを差し出せる。うまく設計すると、レポート全体の“読める力”が一段上がります。

この記事では、ツールチップページの作り方を手順で押さえつつ、ただの補足表示で終わらせないための設計思想と実装のコツをまとめます。読み終えたら、あなたのレポートの「見た目は良いのに、判断につながらない」を減らせるはずです。なお文中では、検索の入口として書かれがちな表記も含めて、power bi tooltip ページの実務的な使い方に寄せて説明します。


ツールチップページで“読ませる”とは何か

ツールチップは「小さな画面」です。だからこそ、情報を詰め込むほど読まれません。読ませるツールチップは、次の3つに答えます。

1) 今見ている値は何か

  • 指標名が曖昧にならない

  • 単位、期間、集計粒度が伝わる

  • どのフィルター文脈の値かが分かる

2) 良いのか悪いのか

  • 目標・前年差・前年差率など、判断の物差しがある

  • 平均、前年差、前年差率、前年差の要因など、比較がある

3) 何が原因っぽいか、次にどこを見るべきか

  • 内訳の上位、急変した日、特定カテゴリの偏りなどが示唆される

  • 深掘り先(別ページ、別ビジュアル)へ視線がつながる

ツールチップは「説明」を置く場所ではありますが、長文の文章を読ませる場所ではありません。短い視線移動で理解できる“構造”を作るのがポイントです。


ツールチップページの作り方

ここでは、レポートページツールチップ(専用ページを作って呼び出す方式)を前提に進めます。標準ツールチップ(フィールドを追加して表示する方式)より表現力が高く、読ませる設計に向きます。

手順1:新しいページを作り、ツールチップ用に設定する

  1. 新しいページを追加する

  2. ページ名を分かりやすくする
    例:Tooltip KPI、Tooltip Sales、Tooltip Product など

  3. ページの設定で、ツールチップとして使う設定を有効にする

    • ページサイズをツールチップ向けのサイズにする

    • ページ情報でツールチップをオンにする

  4. ナビゲーションの邪魔にならないよう、ページを非表示にする(運用上おすすめ)

ポイントは、ツールチップページを「レポートの裏方」として扱うことです。利用者はページ一覧から開かない前提なので、名前は開発者が管理しやすいルールに寄せると後で楽です。

手順2:メインのビジュアルにツールチップページを割り当てる

  1. ツールチップを出したいビジュアルを選択する

  2. 書式設定でツールチップの種類を「レポートページ」に変更する

  3. ページとして、作成したツールチップページを選ぶ

ここで重要なのは「どのビジュアルに、どのツールチップページを割り当てるか」を設計で決めることです。行き当たりばったりに作ると、ツールチップの種類が乱立し、保守不能になります。

手順3:ツールチップページにビジュアルを配置する

ツールチップページには、カード、表、折れ線、棒、マトリクスなどの軽量なビジュアルが向いています。基本は以下の並びが読みやすいです。

  • 上段:対象のラベル(何を見ているか)

  • 中段:主指標の値と、比較(前年差、前年差率、目標差)

  • 下段:内訳やトレンド(原因の手がかり)


“読ませる”ツールチップのレイアウト設計

ツールチップは狭いので、見た目の工夫より「情報の順番」が支配的です。おすすめの型を3つ紹介します。

型A:KPI判断型(最も汎用)

  • タイトル:対象名+期間

  • KPI:売上、利益、件数など主指標

  • 比較:前年差、前年差率、目標差

  • ミニトレンド:直近8〜12点くらいの折れ線

  • 上位内訳:上位3カテゴリ(または増減寄与上位)

向いている場面:経営ダッシュボード、部門別比較、店舗別比較など

型B:要因あたり型(読ませる力が強い)

  • タイトル:対象名

  • 変化の説明:前年差の主要因を上から並べる

  • 例外検知:特定日だけ急変、特定カテゴリだけ偏り など

  • 次のアクション:深掘り先を示す短い誘導(文章ではなく視線誘導)

向いている場面:前年差説明が求められる分析、会議用レポート

型C:明細補助型(現場に強い)

  • タイトル:対象(顧客、商品、案件など)

  • 直近履歴:最近の取引、直近3回の状況

  • 関連属性:担当、地域、チャネル、ステータス

  • 注意喚起:遅延、未回収、在庫不足などのフラグ

向いている場面:営業、サポート、在庫などの運用系レポート


情報量を増やすより、意味を増やす

ツールチップでやりがちなのは、指標を増やして“情報量”を盛ることです。でも読まれるのは、意味が増えたときだけです。意味を増やす代表例は次の4つです。

1) 比較軸を必ず添える

  • 前年同月比、前月比、前週比

  • 目標差、平均との差

  • 同カテゴリ平均との差、同地域平均との差

単体の値は判断できません。比較があると一瞬で良い悪いが決まります。

2) 単位と粒度を、迷わせない

同じ「売上」でも、税抜/税込、返品含む/含まない、日次/月次で意味が変わります。ツールチップのタイトルか、主KPIの近くに短く添えます。

  • 2025年12月 売上(税抜)

  • 直近28日 売上(受注ベース)

3) “原因っぽいもの”を、上位だけ出す

全部を見せる必要はありません。上位3つで十分です。

  • 増減寄与上位3カテゴリ

  • 売上上位3商品

  • クレーム増の上位3理由

4) 数字の意味を、短い文に変換する

文章を長く書くのではなく、数字が示す判断を短文にしてカードのように置きます。

  • 目標未達:あと 1.2M

  • 前年より改善:前年差率 +3.4%

  • 変動が大きい:日次のばらつき 高


実装のコツ:ツールチップ専用の指標を作る

ツールチップは「ホバーした瞬間に読む」ので、表示がブレる、空白が多い、桁が揃わないとストレスになります。ツールチップ用に、読みやすさを優先したメジャーを用意するのが効果的です。

ラベルを安定させる

複数選択や想定外の文脈でも破綻しないようにします。

Tooltip 対象名 =
VAR v = SELECTEDVALUE( DimProduct[ProductName] )
RETURN
IF( ISBLANK(v), "複数または未選択", v )

差分をひと目で分かる形にする

差分は「値」と「率」をセットで置くと判断が速いです。

Tooltip 前年差 =
[売上] - [売上 前年]

Tooltip 前年差率 =
DIVIDE( [Tooltip 前年差], [売上 前年] )

寄与上位だけを見せるための土台を作る

上位表示はビジュアル側で上位Nフィルターを使うのが簡単です。DAXで無理に1行にまとめず、表や棒グラフで上位3だけ出すほうが“読めます”。


デザインのベストプラクティス

余白を削らない

狭いからといって余白を詰めると読めなくなります。数字は余白があるほど読みやすいです。特に上下の余白は「情報の区切り」として効きます。

フォントサイズは小さくしすぎない

ツールチップは小さいキャンバスですが、ユーザーの視線距離は変わりません。小さすぎる文字は読まれない前提で設計します。
目安として、主KPIは大きめ、補足は一段小さめ、注釈は極力減らします。

小数点と桁区切りを統一する

同じ場所に並ぶ値の桁がバラバラだと、比較が遅くなります。

  • 金額:千、万、百万の単位を統一する

  • 率:小数点1桁までにそろえる

  • 件数:小数点は基本なし

色に頼りすぎない

ホバー時に色で判断させると、暗い画面や投影環境で破綻します。
色は補助として、記号や差分値で判断できる状態を目指します。

ミニトレンドは点数を絞る

ツールチップに折れ線を入れると読ませる力が上がりますが、点数が多いと潰れてノイズになります。
期間は短め、粒度は一定、ラベルは最小限が基本です。


よくある失敗と、避け方

失敗1:ツールチップが“ただの明細”になる

対策:比較と判断軸を入れます。
単体の値を増やすより、差分、率、目標差を置くほうが読まれます。

失敗2:ツールチップのページが多すぎる

対策:型で共通化します。
例えば「カテゴリ系はTooltip Category」「商品系はTooltip Product」の2〜3枚に抑え、メジャーとビジュアルを再利用します。

失敗3:表示が重くて、ホバーが気持ちよくない

対策:ビジュアルを軽量にします。
表の列を増やしすぎない、明細行を出しすぎない、複雑な計算をツールチップに詰めない。ツールチップは快適さが価値です。

失敗4:空白が多く、何も伝わらない

対策:空白対策のメジャーを用意します。
複数選択時は「複数」と出す、データなしは「該当なし」と出す。空白はユーザーに不安だけを残します。


仕上げのチェックリスト

内容

  • 何の値か(指標名、単位、期間)が一瞬で分かる

  • 良い悪いを判断できる比較がある

  • 原因の手がかりが上位だけ出ている

  • 深掘りしたくなる次の視点がある

見た目

  • 余白があり、数字が読める

  • 桁や小数点がそろっている

  • 文章は短く、ラベルは明確

  • 重要情報が上、補足が下になっている

動き

  • ホバーしてすぐ表示される

  • 複数選択や例外の文脈でも破綻しない

  • 主要なビジュアルで期待通りに出る


まとめ:ツールチップは“判断の編集”である

ツールチップページは、レポートの装飾ではなく「判断に必要な情報を、最短距離に編集する機能」です。
主指標に比較を添え、原因の手がかりを上位だけ示し、表示を軽く保つ。これだけで、レポートは“見せる”から“読ませる”に変わります。

まずは、よく見られている1つのビジュアルにだけ、型A(KPI判断型)のツールチップを入れてみてください。効果が出たら、同じ型を横展開するのが最短ルートです。

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