はじめに:期間指定は“定義×関数×運用”の三点セット
数値が正しくても、期間の切り方が揺れると意思決定はブレます。
本記事は、よくある期間指定を関数と設計パターンに分解し、そのまま貼れる式と運用上の注意までを一気通貫でまとめました。目的は「だれが見ても同じ範囲が選ばれる」こと。まずは鉄板の関数から。
1. 期間指定で“最初に覚える”基本関数(最小セット)
原則
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集計/比較は
DATEPART
/DATETRUNC
、表示はDATENAME
。 -
相対期間は
TODAY()
/NOW()
を基準にDATEADD
。 -
期間の“境目”(月初/週初/四半期初)は
DATETRUNC
で丸めてから 比較。
2. 目的別レシピ(貼って使える)
以降の例では日付列を [日付]
とします。ブール式はフィルターとして使えます。
2-1. 直近 N 日 / 週 / 月 / 四半期
完成月のみを対象にしたい場合は、後述「完了月/完了週」参照。
2-2. 今日 / 昨日 / 今週 / 先週 / 今月 / 先月
2-3. WTD / MTD / QTD / YTD(To-Date)
To-Dateは当日を含みます。完了月/完了四半期だけにしたい場合は次章。
2-4. “完了”月/四半期/年(当月は含まない)
2-5. ローリング12ヶ月(当月まで or 直近完了月まで)
2-6. 同期間(前年)比較:MTD/完了月/四半期/年
2-7. 任意の開始/終了(パラメータ 2つで範囲指定)
2-8. 週の起点を固定(Mon/Sun/ISO)
2-9. 会計年度(起算月をずらす)
方法A:式でシフト
方法B:データソースの「会計年の開始月」設定(ワークブックのプロパティ)
→ 以後の DATETRUNC('year')
や DATEPART('quarter')
が会計基準に従います。組織で統一するならこちら推奨。
2-10. 営業日だけでの直近N(簡易・休日未考慮)
完全な営業日制御は「営業日カレンダーテーブル」を用意し、関係で接続するのが現実解です。
3. “表示は少なく、分母は広く”の鉄則(Order of Operations)
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前年比/前月比など「前の点」を参照する表計算は、フィルターで消されると計算不能になります。
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解決1:表示フィルターは狭く、データソース/コンテキストで広めの期間を確保。
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解決2:前年値を LOD で保持してから比較。
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4. UIパターン:スイッチ1つで “To-Date / 完了 / ローリング”
同じダッシュボードで切り替え可能にすると、ユーザー教育コストが激減します。
5. 表示品質を上げる小ワザ
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等間隔の時間軸:日付軸は連続(緑ピル)+「欠損値を表示」。
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最終点ラベル:右端だけラベルで凡例いらず。
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参照線/帯:目標・中央値・±3σ。期間比較の読み取りが加速。
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注釈:価格改定・キャンペーンなどイベントを線上に。
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点の間引き:長期×日粒度では線のみ→拡大時に点を表示。
6. 会計・ISO・ロケール差の“すれ違い”を避ける
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週の起点(Mon/Sun)とISO週は結果が変わります。
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会計年度はワークブックで統一(全員同じ結果に)。
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日付文字列は必ず日付型へ正規化してから計算(
DATE/DATEPARSE
)。
7. パフォーマンスと運用(期間指定の影響が大きい)
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抽出(Hyper)+増分更新:日付キーでパーティション。
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初期表示は軽く:直近3〜6か月、月粒度、点なし。
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コンテキストフィルターへ日付を昇格して、他のフィルターを効かせやすく。
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日付のJOIN増殖を避け、粒度が違うテーブルは関係で接続。
8. 実務テンプレ(そのまま貼れる20本)
9. 15分で作る“期間切替ダッシュボード”最短手順
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日付列を確認し、文字列は
DATE/DATEPARSE
で正規化。 -
パラメータ
期間タイプ('day'|'week'|'month'|'quarter')
、期間モード('ToDate'|'Completed'|'Rolling')
、N
を作る。 -
計算
[期間内(モード)]
を作成し、フィルター(True) に。 -
折れ線(列=日付[連続]、行=SUM(値))、最終点ラベルと**参照線(目標/中央値)**を追加。
-
YoY/MoM の表計算を作り、タイルで併記。
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「欠損値を表示」をオン、点は拡大時だけ表示。
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カスタムビュー(役職別)を保存し、サブスクを設定(抽出更新後に送付)。
10. よくあるつまずきと対処
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前年比が Null:表示範囲に前年分が無い → 13ヶ月を分母に確保 or LODで保持。
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To-Date と完了月が混ざる:モードをパラメータ化して明示切替。
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週の起点が人によって違う:式で
'monday'
固定 or ISO週使用。 -
RLSで前年が見えない:分母をコンテキストに(または予め2テーブル設計)。
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表計算が重い:ウィンドウ幅を短縮、月粒度初期表示、抽出で安定化。
まとめ
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期間指定は**
DATETRUNC
で境目を揃え、DATEADD
で相対化**するのが基本。 -
To-Date/完了/ローリングをパラメータで切替できると、全員が同じ言葉で議論できる。
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会計年度・週起点・ISO週などの基準を統一し、分母は広く、表示は狭く(表計算は最後に効く)。
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最後は軽い初期表示とサブスク/カスタムビューで“使われ続ける”運用へ。
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