はじめに:なぜこの可視化を使うのか
構成比をひと目で把握したいとき、最有力の選択肢の1つが円(またはドーナツ)グラフ。ただし項目が多い/差が小さい/複数比較の場面では判断が難しく、棒や100%積み上げ棒のほうが明快なことも。この記事では**「使うべき場面/避ける場面」を押さえつつ、Tableauで迷わず**作れる手順と“実務の落とし穴”をまとめます。
1. まず押さえる基本:ビューの設計思考
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粒度(切り口):カテゴリ/製品/チャネル/地域…を決める
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値(大きさ):売上・件数・数量・工数など、分母となる合計の定義を固定
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順序:基本は値の降順(視線導線が安定)
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色:識別が目的。ブランドカラー/系統色の運用ルールを先に決める
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数の上限:3〜7切れが目安。多いならTopN+その他で集約
円はシェアを1枚で直感提示するのが目的。比較や推移を強調したいときは棒/100%積み上げ棒を第一候補に。
2. 最短の作り方(基本の手順)
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ディメンション(例:カテゴリ)を色へ、メジャー(例:売上)を角度へ
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ラベルにメジャーをドラッグ(書式:
#,###
や#,### 円
) -
クイック表計算 → 総計に対する割合をメジャーに適用し、**値+%**を併記
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ディメンションを右クリック→並べ替え→フィールド:メジャー合計/降順
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ツールチップに**「項目名/値/構成比」**を簡潔に
比率の定番式(テーブル計算)
[構成比] = SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値]))
表計算の方向は**ディメンション方向(円の切れ目)**に合わせる。
3. ラベルと注記のコツ
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重なり回避:小さい切れは外側ラベル+引き出し線
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小数点:%は1桁が読みやすい(例:12.3%)
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閾値で表示制御(合計100%ズレ防止のため非表示制御はラベルで)
// 5%未満はラベル非表示(フィルターには使わない)
[ラベル表示] = SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値])) >= 0.05
4. TopN+「その他」の動的集約(最重要)
小さな切れが大量に出る=読みにくい。セット+パラメータで安定運用。
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パラメータ [N](整数、既定値=5)
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ディメンション(例:カテゴリ)を右クリック→セットを作成→上位タブ
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**「上位 [N]、SUM([値])」**を指定
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計算フィールド:
[カテゴリ(Top/その他)] =
IF [カテゴリ(TopNセット)] THEN [カテゴリ] ELSE 'その他' END
-
色に
[カテゴリ(Top/その他)]
を使用。**「その他」**を末尾に手動並び。
セット方式は集約が安定し、パフォーマンスも良好。
RANK()
やINDEX()
より実務で壊れにくい。
5. ドーナツ(リング)表現:見た目+中心要約
利点:中央にKPI要約を置ける/視覚密度↑/ダッシュボード映え。
5-1. 作り方(2軸オーバーレイ)
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計算フィールド
MIN(1)
を作り、行へ -
マークを円形→色=カテゴリ/角度=SUM([値])
-
MIN(1) をCtrl+ドラッグで複製して2本の軸に
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2本目のマークからディメンションを外し、色=白/サイズ小さめ
-
デュアル軸 → 軸の同期 → ヘッダー非表示
5-2. クリックで中心ラベル切替(セットアクション)
[中心ラベル] =
IF [カテゴリ(選択セット)] THEN
STR([カテゴリ]) + CHAR(10) +
'値: ' + STR(SUM([値])) + CHAR(10) +
'構成比: ' + STR(ROUND(100 * SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値])), 1)) + '%'
ELSE
'合計' + CHAR(10) + STR(WINDOW_SUM(SUM([値])))
END
注意:ドーナツは見栄えは良いが比較精度は棒に劣る。社内標準として**「基本は棒、例外で円/ドーナツ」**を定めるのも◎。
6. “複数メジャーをひとつの円”にまとめる方法
売上/利益/コスト…を1枚で構成比化するなら縦持ちが鉄板。
6-1. ピボット(データソース)
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数値列(売上・利益・コスト…)を選択→右クリック→ピボット
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フィールド名=
[項目]
、値=[値]
にリネーム
6-2. 符号ルールの統一(収益=+、費用=− など)
[値(符号統一)] =
IF [項目] = 'コスト' THEN -[ピボットフィールド値]
ELSE [ピボットフィールド値]
END
角度には
SUM([値(符号統一)])
。合計が0付近だと円は判読困難なので、**P/Lブリッジ(ウォーターフォール)**併載が現実解。
7. フィルターとLOD:**正しい“全体比”**を出す
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画面に見えている範囲に対する割合
→SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値]))
(テーブル計算。ビューの切り口に追随) -
部門や期間で絞っても“全社合計”に対する割合
→ LODで分母固定
[全体合計] = { FIXED : SUM([値]) } // すべての次元を無視
[全体比] = SUM([値]) / [全体合計]
LODはコンテキストフィルターのみ尊重。期間で全体合計を限定したい場合は期間フィルターをコンテキスト化。
8. 複数比較をしたいときの代替案
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100%積み上げ棒:期間×カテゴリの推移比較
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小さな倍数(スモールマルチプル):部門ごとのドーナツを格子状に
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ツリーマップ:カテゴリが多いときに有効
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帯グラフ(ストリップ):一列に大きい順で並べ、微差も比較しやすく
9. 色・書式・アクセシビリティ
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色数は最小限(TopN+その他で抑制)
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色覚多様性配慮:赤緑の近似色を避け、明度差で区別
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凡例の言語:ユーザーの用語に寄せる
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書式:金額は単位(万円/億)を明記、%は小数1桁で統一
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インタラクション:ハイライトは有効、過度なアニメは不要
10. よくあるつまずきと対処
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並べ替えが効かない
→ ディメンション右クリック→並べ替え→フィールド:メジャー合計/降順(手動並びは最終手段) -
ラベルがごちゃつく
→ 閾値でラベル出し分け+ツールチップ補完 -
割合が100%にならない
→ 表計算方向の誤り or フィルターで一部除外。計算の編集でアドレス/パーティション確認 -
小さな切れが強調される
→ TopN+その他で集約、色の明度差で過剰強調を抑える -
比較が伝わらない
→ 棒/100%積み上げに切替、または併載
11. 15分で作る“最小構成”チェックリスト
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☐ ディメンション(カテゴリ)&メジャー(値)を確認
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☐ 円:角度=SUM([値])、色=カテゴリ、ラベル=値+%
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☐ 降順に並べ替え
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☐ TopNパラメータ&セットで“その他”集約
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☐ ドーナツ化(デュアル軸+内側白+中心ラベル)
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☐ ツールチップ最適化(項目/値/%)
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☐ 必要ならLODで分母固定
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☐ 100%積み上げ棒も同ダッシュボードに併載
12. 実務テンプレ(そのまま使える式)
// 構成比(画面に見えている分母)
[構成比] = SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値]))
// TopNパラメータ [N](整数、デフォルト5)
// TopNセット:ディメンション=カテゴリ、上位 N by SUM([値])
// 表示カテゴリ(Top/その他)
[表示カテゴリ] = IF [カテゴリ(TopNセット)] THEN [カテゴリ] ELSE 'その他' END
// 中心ラベル(選択セットで切替)
[中心ラベル] =
IF [カテゴリ(選択セット)] THEN
STR(MIN([カテゴリ])) + CHAR(10) +
'値: ' + STR(SUM([値])) + CHAR(10) +
'構成比: ' + STR(ROUND(100 * SUM([値]) / WINDOW_SUM(SUM([値])),1)) + '%'
ELSE
'合計' + CHAR(10) + STR(WINDOW_SUM(SUM([値])))
END
13. まとめ
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円/ドーナツは構成比を“最短”で直感共有する用途に最適。
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実務の肝はTopN+その他、ドーナツ化+中心要約、LODで分母制御。
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迷ったら100%積み上げ棒やツリーマップを併載し、**“読み手が選べる”**構成に。
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