はじめに
ビジネスの現場では、複数のKPIや異なる視点の指標を同時に追跡することが求められることが多くあります。売上高と広告費用、さらにコンバージョン率を一枚のグラフで見たい場面。あるいは気温と売上、加えて在庫推移を同時に確認したいケース。こうしたニーズに応えるのが「複数軸」の活用です。
Tableauでは2軸グラフ(二重軸)を使うのが一般的ですが、さらに一歩進んで「三重軸」を実現することで、データの相関関係をより直感的に理解できます。この記事では、Tableauで三重軸を作成する方法と、活用の注意点・応用シーンを詳しく解説します。
1. 三重軸を使う意義とは?
二重軸までは比較的よく利用されますが、三重軸を使うメリットは以下のような点にあります。
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多変量の同時比較
三つの異なる指標を一度に確認でき、データ同士の関係性をより深く理解できる。 -
ダッシュボードの省スペース化
複数のグラフを並べる代わりに一枚に集約でき、視覚的に整理されたレポートを作れる。 -
意思決定の迅速化
一目で「どの要因が他に影響を与えているか」を推測でき、議論や分析のスピードが上がる。
例として「売上」「広告費」「ROI」の3つを同時に可視化することで、投資対効果の変化を直感的に読み取ることが可能になります。
2. Tableauにおける二重軸と三重軸の違い
Tableauは標準機能として「二重軸」をサポートしています。これは左軸と右軸を使い、2種類のメジャーを重ねて表示するものです。
一方で「三重軸」は標準機能として直接は用意されていません。そのため、少し工夫をして実現する必要があります。
つまり、二重軸が公式機能、三重軸は応用テクニックという位置づけです。
3. Tableauで三重軸を作成する方法
三重軸を実現する手順は次の通りです。
ステップ1:基本となる二重軸を作成
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任意のディメンション(例:日付)を列シェルフに置く。
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最初のメジャー(例:売上)を行シェルフに配置。
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もう一つのメジャー(例:広告費)を行シェルフにドラッグ。
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二つ目の軸を右クリックし「二重軸」を選択。
→ この時点で二重軸が完成します。
ステップ2:3つ目のメジャーを追加
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新しいメジャー(例:ROI)を行シェルフに追加。
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そのメジャーを「右クリック → 軸を同期化」あるいは「マークの種類を調整」して、既存のグラフに重ねる。
ステップ3:マークタイプを工夫する
三重軸を実用的にするためには、マークタイプを変える工夫が欠かせません。例えば:
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売上 → 棒グラフ
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広告費 → 折れ線グラフ
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ROI → 点(散布図のように)
異なる形状を組み合わせることで、軸の混乱を防ぎつつ、3つのデータを明確に識別できます。
4. 三重軸を使う際の注意点
便利な一方で、三重軸には注意も必要です。
① 軸の解釈が難しくなる
三つのスケールを並行して扱うと、読者が誤解する可能性があります。軸タイトルを必ず明記し、色分けや凡例を工夫しましょう。
② 過剰な情報量になりやすい
一枚に詰め込みすぎると「見にくいグラフ」になります。場合によっては二重軸+補助チャートに分けた方が分かりやすいケースもあります。
③ 集計レベルのズレに注意
売上は日次、広告費は週次、ROIは月次など、粒度が異なるデータをそのまま重ねると誤解を生む原因になります。集計単位を揃えてから三重軸を適用するのが基本です。
5. 三重軸を活用できる具体例
三重軸は「KPI同士の因果関係を視覚化する場面」で特に効果を発揮します。
事例1:ECサイトの広告効果分析
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売上(棒)
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広告費(折れ線)
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ROI(点)
これにより「広告投資が売上に与える影響」「ROIが改善した要因」を即座に把握できます。
事例2:小売業における需要予測
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売上高(棒)
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気温(折れ線)
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在庫数(点)
気温変動が売上や在庫にどのように影響するかを直感的に捉えられます。
事例3:人事部門の人材分析
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採用人数(棒)
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離職率(折れ線)
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従業員満足度(点)
定量的な指標と定性的な指標を一枚のグラフにまとめ、経営判断に役立てられます。
6. 三重軸とダッシュボード設計のコツ
ダッシュボードの中で三重軸を利用する場合は、次の点に配慮しましょう。
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色の統一感
3つの指標を赤・青・緑などはっきり異なる色で区別。 -
注釈の活用
重要なトレンドにはコメントやハイライトを付与して理解を助ける。 -
フィルターとの連動
商品カテゴリや地域を絞り込んで、三重軸グラフが即座に変化するように設定。
これにより、単なる「難しいグラフ」から「意思決定に直結するビジュアライゼーション」に進化します。
7. 三重軸の代替手法
三重軸は便利ですが、場合によっては別の可視化手法の方が適切です。
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二重軸+参考線
三つ目の指標を参考線やバンドで表現する方法。シンプルさを保てます。 -
散布図+サイズや色
指標の一つを「点の大きさ」や「色」で表すことで、多次元の可視化が可能。 -
小複数チャート(スモールマルチプルズ)
三つの指標を並列グラフで比較。読みやすさを優先したいときに有効。
まとめ
Tableauでの三重軸は、標準機能ではなく応用テクニックですが、活用すれば「複数のKPIの関係性」を一目で把握できる強力な手法です。
ただし、読み手の混乱を避ける工夫が欠かせない点も忘れてはいけません。マークタイプや色の使い分け、注釈や凡例を適切に配置することで、三重軸は意思決定をサポートする頼もしい武器となります。
三重軸を使いこなせば、単なる「見える化」にとどまらず、データから次のアクションを導くための洞察を得ることができます。あなたの分析プロジェクトでも、ぜひ一度取り入れてみてください。
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