Power BIスライサーが連動しない原因と解決方法を徹底解説

Power BIを使っていると、レポートの見た目をより分かりやすくするためにスライサーを設定することがよくあります。しかし、複数のビジュアルとスライサーを組み合わせていくと、「あれ、このスライサーだけ他のチャートと連動しない…?」という状況に陥ることがあります。今回は、スライサーが思うように連動しない原因や、それを解決するためのポイントを整理してみました。


スライサーが連動しない主な原因

1. データモデルのリレーションシップ設定

まずチェックしておきたいのが、テーブル同士のリレーションシップ(関係性)です。

  • リレーションシップが設定されていない
    スライサーに使う列と、実際に表示したいチャートのテーブル間でリレーションシップが存在しない場合、フィルタの対象になりません。
  • リレーションシップの方向が単方向になっている
    Power BIではリレーションシップの方向を「単方向」または「双方向」に設定できます。単方向だと一方のテーブルから他方へのフィルタのみが効きます。双方向に設定すると相互にフィルタが可能になります。必要に応じて方向を変更してみると解決することがあります。

対策のポイント

  • Power BI Desktopの[モデル]ビューで、関係が正しく紐づいているかをチェックする。
  • リレーションシップの方向を「両方向(Both)」に切り替えて試す。
  • 必要に応じて、主キー・外部キーの設定を見直す。

2. スライサーの設定範囲(フィールド)の違い

スライサーには「日付」を使う場合や「カテゴリ」を使う場合、数値をスライサーに使う場合など様々ですが、ビジュアルがどのテーブルのデータを参照しているかによって、スライサーが効かなくなるケースがあります。

  • 同じ列に見えて実は異なるテーブルの列を使っている
    名前が同じでも、別のテーブルに存在する同じような列をスライサーに使っていると、実際のデータ集計のときにフィルタがうまくかからないことがあります。
  • 集計の軸となるフィールドの粒度が違う
    たとえば「月別」スライサーでフィルタしたいにもかかわらず、ビジュアルで使用しているデータは「日」単位や「四半期」単位など、異なる粒度で集計していると、思った結果が出ない場合があるので、設定が合っているか要確認です。

対策のポイント

  • スライサーとビジュアルで使う列が、同じテーブルの正しい列になっているかを確認。
  • 日付の粒度を合わせるときは、Power Queryで日付テーブルを作成して参照する方法も便利。
  • カラム名が似ている場合は、混乱しないように名前をわかりやすく変えておく。

3. “Sync Slicers” (スライサーの同期)設定が不十分

Power BIには、「スライサーの同期」機能があります。これは複数ページに跨(また)ぐレポートで同じスライサーを同期させる場合に使われる便利な機能です。しかし、同期の設定をしないと「なぜかこのスライサーだけ別ページでは連動していない」という事態が起こります。

  • Sync Slicersで同期設定をしていない
    各ページのスライサーを同時に動かすためには、レポートビューモードで「視覚エフェクトの同期」(一部日本語UIだと「スライサーの同期」と表示)を開いて、チェックボックスにチェックを入れる必要があります。
  • 同期はしているが、片方のページのみ可視化設定をしていない
    同期設定を行っていても、ページごとの可視化設定がオフになっていると、一方のページでそのスライサー自体が非表示になっている状態になり、意図した連動が分かりづらくなります。

対策のポイント

  • レポートビューモードで「視覚エフェクトの同期」パネルを開き、対象のスライサーが同期したいページでしっかりチェックされているかを確認。
  • 必要に応じて、可視化(Visibility)の設定も見直す。

4. 既定の相互作用設定(クロスフィルター)の影響

Power BIのビジュアル間相互作用(Cross Filter / Cross Highlight)は、ビジュアルごとにデフォルト設定が割り当てられています。あるチャートをクリックした時に、他のチャートがハイライトされるだけなのか、絞り込まれて更新されるのか、それとも何もしないのか。これらは「ビジュアル間の相互作用」の設定で変わります。

  • スライサーだけが他のビジュアルをフィルタしない設定になっている
    何らかの理由で、ビジュアル間の相互作用が無効化されている場合、スライサーを操作しても他のビジュアルが変わらないことがあります。
  • チャートからチャートの相互作用は期待通りだが、スライサーの相互作用が異なる
    スライサーとビジュアルの関係が、別のチャート同士の相互作用と同じとは限らないため、スライサー側の設定も一度確認を。

対策のポイント

  • [レポート]ビュー上部の「書式リボン > ビジュアル間の相互作用」を確認して、期待する動きをするように設定を変更する。
  • スライサーに対して「フィルタ」または「ハイライト」が設定されているかチェック。
  • 一度デフォルトに戻してから再度設定をやり直すと、問題が解決する場合もある。

5. コネクタ(データ取得元)やDirectQueryの制約

データをインポートではなく、リアルタイム接続やDirectQueryモードで使っている場合、データソースや接続モードによってはフィルタが効かなかったり、思うように動作しなかったりすることがあります。

  • 特定のソースに対してはディメンションテーブルが無い
    クラウドのサービスや、アプリケーションのAPI経由で取ってきたデータには、集計用のディメンションが整備されていない場合があります。
  • DirectQueryのパフォーマンス制限
    大量データをリアルタイムでクエリしていると、スライサーを操作した際の応答が遅くなることで、意図せず操作をキャンセルしてしまうといった現象が起こるかもしれません。

対策のポイント

  • 必要に応じてディメンションテーブルを自分で作成し、インポートモードで扱えるようにデータを整形する。
  • DirectQueryモードの場合はパフォーマンスに注意し、集計の粒度を落とす・日付フィルタで範囲を小さくして試すなどの工夫をする。
  • 可能ならインポートモードに切り替えてパフォーマンスを検証する。

まとめ

スライサーが連動しない原因は多岐にわたりますが、大きく分けると「データモデルのリレーションシップの設定不備」「粒度の違い」「同期や相互作用の設定ミス」が主なポイントです。特にPower BIを使い始めたばかりの頃は、思い通りにいかない場合の多くが、リレーションシップの問題や設定画面の見落としに起因していることが多いです。

もしスライサーがうまく連動しない場合は、以下の手順でチェックしてみると問題をスムーズに特定できるでしょう。

  1. データモデル(リレーションシップ)の確認
  2. スライサーとビジュアルで使用している列や粒度の整合性確認
  3. スライサーの同期(Sync Slicers)設定の見直し
  4. ビジュアル間相互作用設定の再確認
  5. 接続モードやデータソースの仕様の考慮

Power BIは柔軟性が高い分、設定項目も多いツールです。だからこそ、問題が起きたときはシンプルなステップに分けて確認をしてみましょう。意外と些細な見落としでスライサーが連動していなかったりするものです。

皆さんがスライサーを使いこなし、分かりやすいレポートを作成できるように、今回の内容がお役に立てれば幸いです。今後もPower BIを使う中で疑問点やつまずきポイントが出てきたら、一つ一つ試しながら原因を切り分けていきましょう。きっと、より使いやすくて分析に役立つダッシュボードが完成するはずです。

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