Power BIで「折れ線グラフを複数出したい」という要望はとても多いです。売上と利益、実績と予算、今年と前年差、店舗別の推移、部門別の推移、カテゴリ別の推移。時間の流れを見ながら、比較もしたい。折れ線グラフはそのための定番ですが、複数系列を入れ始めると、急に見づらくなったり、数字が正しく見えなかったり、操作が重くなったりします。
この記事では、power bi 折れ線グラフ 複数を「見やすく」「壊れにくく」「重くしない」ための作り方を、パターン別にまとめます。どれかひとつが正解ではなく、目的に合う型を選ぶのが近道です。
まず整理:複数の出し方は3種類ある
折れ線グラフを複数にしたいと言っても、意図はだいたい次のどれかです。
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1つの折れ線グラフに複数の線を出したい
例:店舗別、カテゴリ別、担当者別など。同じ指標を分けて出す。
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1つの折れ線グラフに複数の指標を出したい
例:売上と利益、PVとCV、稼働率と残業時間など。指標が違う。
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複数の折れ線グラフを並べたい(小分けに比較したい)
例:部門ごとに別の折れ線を並べる、KPIごとに小さな折れ線を並べる、など。
作り方も注意点も違うので、まずどれをやりたいかを決めると迷いません。
時系列は日付テーブルが基本(まず土台を整える)
折れ線グラフの比較がズレる原因として多いのが、日付が安定していないことです。日付列が文字列だったり、日付の欠けがあったり、月の並び順が崩れていたりすると、線がガタガタになったり、月が飛んだりします。
折れ線グラフを複数系列で見せるほど、日付の土台が重要になります。最低限、次は押さえたいです。
・日付テーブルを用意して、日付を連続で持つ
・事実テーブルの日付列とリレーションを結ぶ
・月表示なら、月名を月番号で並び替える
・年度が必要なら年度列も作っておく
ここが整うと、複数系列を入れても挙動が安定し、比較の信頼性が上がります。
パターン1:同じ指標を「カテゴリ別に複数線」で出す
power bi 折れ線グラフ 複数で一番分かりやすいのがこの型です。たとえば売上の推移を「店舗別」「カテゴリ別」で同じグラフに出したい場合です。
作り方(基本)
・X軸:日付(Dateテーブルの月や日)
・値:売上メジャー
・凡例:カテゴリ(店舗、部門、商品カテゴリなど)
これで複数線が出ます。
見やすくするコツ:最初から線を増やしすぎない
凡例に入れるカテゴリが20個、50個になると、グラフは一気に読めなくなります。よくある改善策は次です。
・上位Nだけに絞る
売上上位10店舗だけ表示するなど。残りは「その他」にまとめると読みやすいです。
・スライサーで絞ってから見る
まず地域を選ぶ、部門を選ぶなど、カテゴリの母数を減らしてから線を出します。
・小分けの比較に切り替える(後述のスモールマルチプル)
線が多いなら、同じ画面内で小さな折れ線を並べた方が理解しやすいケースが多いです。
よくある失敗:凡例に入れる列を間違える
例えば「店舗名」や「取引先名」を凡例に入れると、ユニーク値が多すぎて線が増えすぎます。凡例に向いているのは、せいぜい10〜15種類くらいに収まる分類です。多すぎる場合は、階層(地域→店舗)で絞り込みの導線を作る方が現実的です。
パターン2:複数の指標を同じ折れ線グラフで比較する
売上と利益、PVとCV、件数と金額など、指標が違うときの型です。ここは作り方を間違えると一気に読めなくなります。
2-1:同一単位なら、そのまま複数メジャーを追加
例えば「売上」と「予算」は同じ単位(円)なので、同じ軸に入れても理解しやすいです。
・X軸:日付
・値:売上、予算(複数メジャーを値に入れる)
これで線が2本出ます。実績と予算の差分、達成率なども一緒に出せます。
2-2:単位が違うなら、二軸を検討する(ただし乱用しない)
例えば「売上(円)」と「客数(人)」を同じ折れ線で出すと、単位が違うのでそのままだと比較できません。このとき二軸が候補になります。
ただし二軸は便利な反面、読み手が誤解しやすいです。二軸にするなら、次のルールを守ると安全です。
・二軸は最大でも2指標まで
・片方は補助指標(理由付け)にする
・スケールが違いすぎる指標を無理に重ねない
・可能なら率に変換して単位を揃える(例:売上ではなく成長率、客数ではなく前年比)
「同じ形で上下するから相関があるように見える」錯覚が起きやすいので、二軸は必要な場面だけに絞ります。
2-3:指数化(基準=100)で比較する
単位が違っても比較しやすくする王道が指数化です。例えば、今年4月を100として、売上と客数の推移を同じ基準で見せます。
指数化のメリットは、単位を揃えられることと、変化の方向や大きさが直感的に分かることです。二軸より誤解が少なく、複数線の比較に向きます。
考え方としてはこうです。
・基準月(または基準日)の値を取り、それを100として、各月を相対化する
・売上も客数も同じスケールになるため、同じグラフで比較しやすい
指数化は、経営層向けの資料でもよく使われます。
パターン3:今年と去年、前年差、累計など「比較の型」を作る
折れ線グラフを複数にしたい理由の多くは、単なる複数線ではなく「比較」をしたいからです。ここでは鉄板の型を整理します。
3-1:今年と去年を同じ折れ線で出す
・値に「今年の売上」「去年の売上」を入れる
・X軸は月
これで2本線になります。季節性がある指標で特に有効です。
注意点は、日付テーブルが正しく繋がっていないと、去年の線がズレたり欠けたりすることです。また、会計年度なら4月始まりで比較する方が現場の感覚に合います。
3-2:前年差を別線にする(差の推移を見たい)
今年と去年を見ても良いですが、「差そのもの」が大事な場合は、差分の線が有効です。
・値:前年差(今年-去年)
・X軸:月
これで、いつ差が広がり、いつ縮んだかが見やすくなります。
3-3:月次と累計を同時に見たい
月次の波と、累計の進捗は意味が違います。1つのグラフに無理に混ぜるより、次のどちらかが分かりやすいことが多いです。
・グラフを2つ並べる(上:月次、下:累計)
・または、コンボ(棒+折れ線)で月次を棒、累計を折れ線にする
「複数線」だけが答えではなく、見せ方で理解が変わります。
線が多くて見えないときの解決策
複数の折れ線が見づらくなる最大の原因は「線が多い」ことです。ここは逃げ道を用意するのがコツです。
1)スモールマルチプルで小分けにする
同じ折れ線をカテゴリごとに小さく並べる方法です。これが最も読みやすいケースが多いです。
・店舗別の推移を、小さな折れ線で並べる
・部門別の推移を、同じスケールで並べる
メリットは、線が重ならず、比較がしやすいことです。デメリットは、スペースを取ることです。大きな画面で見るレポートや、概要ページに向きます。
2)上位Nとその他に分ける
線を減らすための実務的な方法です。特に営業や店舗分析で効果が高いです。
・上位10は個別線
・残りは「その他」1本にまとめる
これで読みやすさが一気に上がります。残りの詳細は、ドリルスルーで別ページに逃がすと運用しやすいです。
3)ハイライト用の線だけを太くする考え方
全員の線を全部見せるのではなく、注目対象だけを強調する設計です。
・スライサーで選んだ店舗だけ濃く出す
・他は薄く出して背景化する
これをやると、比較の焦点がブレません。見せたい対象が決まっている会議で特に効きます。
4)ツールチップで詳細を出す
グラフ自体はシンプルにして、詳細はカーソルを当てたときに出す。これも複数線を減らす有効手段です。
・値だけでなく前年差や構成比をツールチップで表示
・その月の上位カテゴリ内訳をツールチップページで表示
画面の情報量を増やさずに、必要な人だけ深掘りできます。
複数折れ線で数字が合わないときに疑うポイント
見た目の話だけでなく、「数字が合わない」「一部の線だけおかしい」というトラブルも多いです。複数系列にすると問題が表面化しやすいので、原因を絞っておくと早いです。
1)日付の軸が事実テーブルの列になっている
日付テーブルではなく、売上明細のDate列をそのまま軸にしていると、日付が欠けたときに線が途切れます。さらに前年比較などでズレが出やすいです。基本は日付テーブルを軸にします。
2)カテゴリの粒度が合っていない
店舗別のはずが、店舗×担当者の粒度で集計されているなど、カテゴリの列が想定と違うと線が増えたり数字が変になります。凡例に入れる列は「何を1本の線として表すか」が説明できるものにします。
3)多対多や双方向フィルターで伝播が迷子
複数のテーブルが絡むと、フィルターが意図しない形で伝わることがあります。特に多対多や両方向フィルターが増えると、線ごとの数値が不安定になります。基本はスター型、単方向で整えると安定します。
4)メジャーが意図せず行を重複計算している
SUMXなどの反復系や、計算列の扱いが原因で重複計上が起きると、カテゴリ別にしたときに違いが顕著に出ます。まずは単純なSUMのメジャーで確認し、そこから複雑なロジックに戻すと原因を切り分けやすいです。
操作が重いときの対策(複数線はクエリが増えやすい)
power bi 折れ線グラフ 複数が重くなる理由は、線が増えるほど計算・描画が増えるからです。さらにページに他のビジュアルが多いと、操作のたびに更新が増えて体感が悪化します。
重くなるときは、次の順で効きやすいです。
1)凡例の種類数を減らす
上位N、スライサーで絞る、スモールマルチプルにするなど。
2)ページのビジュアル数を減らす
折れ線が複数系列のページは、それだけで計算が増えます。概要ページは絞り、詳細は別ページに分けると安定します。
3)相互作用を整理する
クロスハイライトやフィルターを全部オンにすると、操作のたびにクエリが連鎖します。本当に必要な相互作用だけ残すのが安全です。
4)メジャーの計算を軽くする
同じ計算を繰り返すメジャーや、過剰に複雑な条件分岐は遅くなりがちです。まずは必要最低限のメジャーで折れ線を作り、後から装飾を足すと破綻しにくいです。
実務でおすすめの作り方(迷ったらこの型)
最後に、現場で使われやすい「複数折れ線」の型を、目的別にまとめます。
型A:実績と予算(2本線)
・値:実績、予算
・X軸:月
・差分と達成率はツールチップへ
会議で最も使われやすい型です。
型B:今年と去年(2本線)
・値:今年、去年
・X軸:月
・スライサーで年度切替
季節性のある指標で強いです。
型C:カテゴリ別(上位10+その他)
・凡例:カテゴリ
・上位Nだけ線、その他は1本
・詳細はドリルスルー
線が増える問題を最も現実的に解決します。
型D:単位が違う指標は指数化して比較
・売上、客数など
・基準=100に揃える
二軸の誤解を減らし、変化の比較がしやすいです。
型E:線が多いならスモールマルチプルで分割
・部門別や店舗別の推移を並べる
・同一スケールで比較
読めるグラフにする最短ルートです。
まとめ
power bi 折れ線グラフ 複数を見やすく作るには、まず「複数の意味」を整理し、目的に合う型を選ぶことが重要です。1つのグラフに線を詰め込みすぎると、読めない・誤解する・重い、の三重苦になりやすいので、上位N、指数化、スモールマルチプル、ツールチップ、ページ分割といった逃げ道を用意するのが現実的です。
時系列の土台(日付テーブルと月並び)を整える
凡例の種類数をコントロールする
単位が違う比較は二軸より指数化を検討する
重いならビジュアル数と相互作用を減らす
この方針で作ると、複数折れ線でも「見やすい」「会議で使える」「現場に定着する」レポートに近づけます。
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