「毎月の締め処理で同じ画面を開いて同じ転記をしている」「Excelと基幹システムを行ったり来たりしている」「ファイル名変更・アップロード・メール送付が毎日発生する」
こうしたルーティンワークは、忙しい現場ほど“見て見ぬふり”になりがちです。
そこで候補に上がりやすいのが Power Automate Desktop(デスクトップフロー)。
Windows上のアプリ操作を自動化できるRPAで、ドラッグ&ドロップのアクションやレコーディングで作りやすいのが特徴です。
ただし、導入は簡単そうに見えて、やり方を誤ると「動くけど定着しない」「属人化して保守できない」「例外処理で止まる」になりがち。
この記事では、導入〜運用で失敗しない“現実的な進め方”を、案件発注の検討材料になるレベルで整理します。
まず整理:Power Automate Desktopが向いている課題
Power Automate Desktopが効くのは、ざっくり言うと次のタイプです。
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画面操作が中心(Web/Windowsアプリ/レガシーアプリのクリック・入力・ダウンロード等)
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手順が決まっていて繰り返す(日次・週次・月次)
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人がやるとミスが出やすい(転記・照合・ファイル操作)
「他社RPAを使っているがランニングコストが高い」「習得が難しく進まない」「どの業務が自動化対象か分からない」などの悩みから検討が始まるケースも多いです。
“導入でつまずくポイント”はだいたい同じ
現場でよく起きるのはこのあたりです。
1) 自動化対象の選び方を間違える
初手で“例外だらけの業務”を選ぶと、開発も運用も重くなります。
最初は 例外が少なく、成果が見えやすい業務が鉄板です。
2) 「動く」だけで終えてしまう
RPAは“止まったら人が困る”ので、ログ・例外処理・再実行手順まで含めて設計しないと運用で詰みます。
3) 属人化して改修できなくなる
命名規則・共通部品・コメント・エラー時の戻り方がないと、作った本人以外が触れずに止まります。
失敗しない進め方:おすすめは3フェーズ
フェーズ1:概念検証(PoC)で「自動化できる/無理」を早期判定
いきなり本番を作るのではなく、短期間で以下を確認します。
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対象システムの画面・要素が安定して取れるか
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例外(エラー、タイムアウト、入力揺れ)をどう扱うか
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手動時の工数に対して効果があるか
こうしたPoC(概念検証)は、導入支援サービスの典型メニューにも入っています。
フェーズ2:業務分析・可視化 → To-Be設計
「現場がこうやってる」をそのまま自動化すると、例外とムダも自動化してしまいます。
業務手順を可視化し、標準化したTo-Beを作ってから実装に入るのが、結局いちばん早いです。
フェーズ3:開発 → 移行 → 運用保守(ここで差がつく)
本番稼働後に効いてくるのは、作り込みよりも運用設計です。
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例外処理(中断・リトライ・代替手順)
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ログ(どこで何が起きたか追える)
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問い合わせ窓口(一次切り分け)
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改修フロー(画面変更・業務変更への追従)
「開発・移行・保守支援」「問い合わせデスク」まで含む支援形態が用意されているのは、この運用課題が多いからです。
“内製化したい”なら、トレーニングと標準化がセット
Power Automate Desktopは直感的に作りやすい一方で、作り手が増えるほど品質がばらつきやすいです。
だから内製化は「研修」だけでなく、次のセットが必要になります。
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開発標準(命名、フォルダ構成、例外、ログ、部品化)
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レビュー運用(誰が、何を、いつ見るか)
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“まずは数本を一緒に作る”伴走
目的と習熟度に合わせたトレーニングが提供されるのも、定着まで見据えると合理的です。
コストの話を1つだけ:無料で始められるが「無人運用」は別腹になりやすい
Power Automate Desktopは、条件によっては“まず触る”を無料で始めやすい面があります。
ただし、夜間実行や完全自動(無人)など、運用形態によって必要ライセンスが変わることがあるため、設計フェーズで前提を固めたほうが安全です。
発注を検討する方向け:支援を頼むと“得する”境界線
外部支援が効くのは、だいたい次の条件のときです。
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最初の1〜3本で失敗したくない(PoC〜設計の速度を上げたい)
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他社RPAから移行したい(棚卸し・優先度付け・移植方針が必要)
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情シスと現場をまたぐ(権限・運用・標準化が必要)
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止まった時に困る(監視・ログ・復旧手順が要る)
終わりに
もし「自動化したい業務はあるが、どこから着手すべきか分からない」「PoCだけ第三者に見てほしい」「内製化のルール設計から支援してほしい」という状況なら、まずは
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対象業務の候補(3〜10件)
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だいたいの頻度(毎日/月次など)
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例外の多さ(ざっくりでOK)
だけ整理して相談すると、最短で方向性が決まります。
Microsoft Power Automate の無償版(Free プラン)は、小規模かつ限定的な自動化や 学習・試用 に適したオプションです。
- 実行回数や使用できるコネクタなど、いくつかの制限がある一方で、基本的な自動化なら十分に対応可能。
- ビジネスで本格的に活用するにあたっては、有料プランへの切り替えを検討するのが一般的。
まずは無償版で試してみて、使い方や効果を実感したうえで組織全体で導入するか判断するのがおすすめです。運用時の不明点やライセンス選定でお悩みの場合は、無料相談やセミナーを活用しながら最適解を見つけてください。
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