「CSVに緯度・経度があるのに地図に出ない」「点が北極やアフリカ西岸(0,0付近)に飛ぶ」「住所のままで精度が足りない」——Tableauで“緯度経度(lat/lon)を正しく扱うコツを、最短手順から応用の空間計算、複数レイヤー重ね、空間ジョイン、カスタム・ジオコーディングまで、現場でそのまま使える形でまとめました。
1. Tableauが「緯度・経度」を理解する仕組み(超重要ポイント)
-
地理ロール(Geographic Role)をフィールドに割り当てると、Tableauは地図用の[Latitude (generated)] と [Longitude (generated)]を自動生成します。これらは“住所や都道府県名などの名称→座標”に変換する仕組み(内蔵ジオコーディング)です。Tableau Help+1
-
いっぽう、データに元から緯度・経度が入っている場合は、それらを**数値(小数)として使い、必要に応じて地理ロール「Latitude/Longitude」**を明示的に割り当てます(右クリック→Geographic Role)。Tableau HelpSalesforce
-
座標系(SRID)に指定がなければ、TableauはWGS84(EPSG:4326)として解釈します。空間ファイルをつないだ場合も内部でWGS84に変換されます。Tableau Help+1
ひとことで:
名称ベース=自動生成の緯度経度、数値ベース=手持ちの緯度経度。どちらも使えるが、測地精度や自由度は“数値ベース”が上。
2. 最短手順:CSVの緯度・経度を地図に出す(5ステップ)
-
データ型を確認:緯度(Lat)は -90〜90、経度(Lon)は -180〜180 の小数(Number/Decimal)に。文字列なら数値化しておく。
-
地理ロールを付与:データペインで Lat を右クリック→Geographic Role → Latitude、Lon を右クリック→Geographic Role → Longitude。Tableau Help
-
配置:ColumnsにLongitude、RowsにLatitude(基本のXY)。
-
マーク:Mark TypeをCircleに、必要ならDetailにIDやカテゴリを置く。
-
検証:日本の点なら東経 ~127–146、北緯 ~26–45に見えるはず。おかしければ Lat/Lon 逆転や単位ミスを疑う。
3. 空間計算の要:MAKEPOINTで“本物の空間オブジェクト”にする
-
構文と順序:
MAKEPOINT(latitude, longitude [, SRID])
例)MAKEPOINT([Lat], [Lon])
**引数の順序は「緯度→経度」**です(ここ、大事)。また、SRID
を省略するとWGS84扱いになります。Tableau Help -
注意:
MAKEPOINT
は**自動生成の [Latitude (generated)] / [Longitude (generated)]**を直接は使えません。元データの列を使ってください。Tableau Help
これで緯度経度をGeometry型の“点”に変換できます。以降のMAKELINE/DISTANCE/BUFFER/INTERSECTSなどの空間関数・空間ジョインと組み合わせ可能に。
4. 原点と目的地を線で結ぶ:MAKELINE(OD可視化)
-
基本形
MAKELINE(
MAKEPOINT([Origin Lat], [Origin Lon]),
MAKEPOINT([Dest Lat], [Dest Lon])
)
-
これで出発点→到着点のジオデシック(地球上の最短経路)ラインが描けます。フライト/配送/移動などの可視化に最適。Tableau Help
5. 距離と“商圏(バッファ)”を一瞬で:DISTANCE/BUFFER
-
距離:
DISTANCE(
MAKEPOINT([Lat1],[Lon1]),
MAKEPOINT([Lat2],[Lon2]),
'km' // 'meters' 'kilometers' 'miles' 'feet' などが指定可
)
単位は
'meters'/'kilometers'/'miles'/'feet'
などを指定できます。Tableau Help -
バッファ(商圏円・到達圏):
BUFFER( MAKEPOINT([Lat],[Lon]), [半径数値], 'miles' )
点の周りに半径rの多角形(円)を作成。フィルターや色分けと組み合わせれば、**「半径5km以内の店舗」**などが瞬時に表現可能。Tableau Help
6. 座標系(SRID)の実務:WGS84だけじゃない場合
-
測量や設備管理などで**投影座標(例:平面直角座標)**を受け取ることがあります。そんなときは:
MAKEPOINT([Yまたは北ing], [Xまたは東ing], [EPSGコード])
のようにSRID(EPSGコード)を指定して正しい座標系で空間化します。SRID未指定ならWGS84(EPSG:4326)。Tableau Help
-
データベースの空間接続では、代表的なSRID(例:NAD83=EPSG:4269、ETRS89=EPSG:4258、WGS84=EPSG:4326)がサポートされます。Tableau Help
-
空間ファイルを接続すると、Tableauは内部でWGS84に変換して地図上に描きます。Tableau Help
迷ったら:SRIDを明示するか、受領元に「この座標のEPSGは?」と確認しましょう。
7. レイヤーで重ねる:複数マークレイヤーとデュアル・アクシス
-
複数マークレイヤー(2020.4+)
-
まず1枚の地図を作成
-
別の地理フィールド(またはGeometry)をビューにドラッグすると、左上に**“Add a Marks Layer”**のドロップターゲットが現れます
-
そこにドロップ→レイヤーが追加(各レイヤーは独立にマークタイプや色、ラベルを設定可)Tableau Help
-
-
デュアル・アクシス(二層重ね、旧来の定番)
例:州の塗りつぶし+都市のポイントを重ねる——Longitude(generated)を2つ置いて右クリック→Dual Axis。必要に応じて不透明度や順序を調整します。Tableau Help+1 -
カスタム座標(自前の緯度経度)と生成座標の併用も可能(2018.1+)。デュアル・アクシスで重ねるのが典型です。Salesforce
8. 住所に座標を足す:カスタム・ジオコーディング
-
内蔵ジオコーディングで認識できない拠点名や独自エリア(商圏コードなど)は、CSVで緯度経度と名称を用意して、Map→Geocoding→Import Custom Geocodingで取り込みます。取り込んだジオコーディングはそのPC上の全ワークブックで利用可能、パッケージ化(.twbx)時はサイズが増える点に注意。Tableau Help
-
取り込み後は、該当フィールドに**地理ロール(カスタム)**を割り当てて使います。Tableau Help
9. “緯度経度×ポリゴン”で答えを出す:空間ジョイン(Intersects)
**ポイント(店舗)がどのエリア(市区町村や商圏ポリゴン)**に属するかを判定したいときは、
-
ポリゴンの空間ファイル(例:行政界)に接続
-
点側のデータは
MAKEPOINT([Lat],[Lon])
でGeometry化 -
リレーション/結合のJoin Clauseで**Intersects(交差)**を指定
とすれば、境界に対する包含判定ができます。Tableau Help
10. 変換・前処理のコツ(DMS→十進法、表記揺れ、桁)
-
度分秒→十進法:
十進度 = 度 + (分 / 60) + (秒 / 3600)
西経・南緯は負号に。例:139°44'28.0"E → +139.7411
、35°39'29.2"N → +35.6581
-
小数点の統一:小数点はピリオド(.)。カンマ(,)小数は読み込み時に誤解釈されがち。
-
桁数:小数第5位で約1m単位、都市内分析では5〜6桁を目安に。
-
列名の慣例:
Latitude
/Longitude
やLat
/Lon
など判別しやすい名前にしておくと、後工程で迷いません。 -
範囲チェック:Latが**±90を超える**、Lonが**±180を超える**→座標系違いや列の取り違えが濃厚。
11. つまずきやすい症状と解決チェックリスト
症状 | よくある原因 | 解決策 |
---|---|---|
すべて同じ場所(北極 or 0,0)に集まる | Lat/Lonの列を逆に使っている/文字列のまま | Lat→Rows、Lon→Columns、数値に変換、範囲を再確認 |
住所は地図に出るが自前座標が出ない | 自動生成の座標と混在、またはロール未設定 | 自前列に地理ロール(Latitude/Longitude)、必要ならMAKEPOINTで統一 |
距離が想定と合わない | 単位ミス・楕円体差 | DISTANCE(...,'km'/'miles'...) を明示、比較は同一条件で Tableau Help |
線が出ない | Origin/Destの対応が取れていない | IDでペアリング、MAKELINE( MAKEPOINT(...), MAKEPOINT(...) ) を確認 Tableau Help |
点がズレる | 投影座標なのにWGS84扱い | MAKEPOINT(y,x, EPSG) でSRID指定 Tableau Help |
12. 実務テンプレ(コピペOK)
A. 会社⇄店舗の路線図(OD)
[Origin] := MAKEPOINT([HQ Lat],[HQ Lon])
[Dest] := MAKEPOINT([Store Lat],[Store Lon])
[Line] := MAKELINE([Origin],[Dest])
-
色で担当部門、サイズで売上ボリューム、ツールチップに住所・所要時間を表示。Tableau Help
B. 来店距離(最近接店舗まで)
[Cust Point] := MAKEPOINT([Cust Lat],[Cust Lon])
[Shop Point] := MAKEPOINT([Shop Lat],[Shop Lon])
[Distance km] := DISTANCE([Cust Point],[Shop Point],'km')
-
しきい値(例:5km以内)で色分け、ヒストグラムと並べると配分がわかる。Tableau Help
C. 商圏バッファ(半径をパラメータ化)
// [半径] パラメータ(数値, 1〜30 km など)
[Buffer] := BUFFER( MAKEPOINT([Lat],[Lon]), [半径], 'km' )
-
**[半径]**をスライダーで動かし、到達圏の変化を即時に検証。Tableau Help
D. 点→行政界の紐付け(空間ジョイン)
-
データモデルでポリゴン⇄ポイントをIntersectsで結合。店舗が属する市区町村や商圏コードを自動付与。Tableau Help
13. “伝わる地図”にする配色・UI・レイヤー設計
-
意味の一貫性:赤=注意/緑=良好、青=中立など全ダッシュボードで統一。
-
色だけに頼らない:ラベル、形(Shape)、凡例の説明文を併用。
-
レイヤー:ベースにポリゴン(面)、上に点、必要なら経路(線)。Marksレイヤーなら何層でも(同一データソース)重ねられます。Tableau Help
-
デュアル・アクシス:自前座標と生成座標の混在や別ソースの重ねには今も強力。Tableau HelpSalesforce
14. パフォーマンス最適化(“軽く・速く・安定”)
-
マーク数の抑制:都市単位→市区町村→町丁の順で粒度を段階的に。
-
**抽出(.hyper)**でI/O短縮、不要列・期間の削減。
-
LOD/集計の前倒し:高負荷の表計算は可能な限り前処理やFIXEDで簡素化。
-
レイヤーは意味で分ける:点と面と線で役割を分担、選択可能性や可視性(目玉アイコン)を活用。Tableau Help
15. 使い分け基準:住所ジオコーディング vs 自前の緯度経度
-
住所だけ・精度は町レベルでよい:地理ロール+生成の緯度経度で手早く可視化。Tableau Help
-
入口が座標・精度を担保したい:自前の緯度経度+MAKEPOINTで空間化、距離/バッファ/線など拡張分析へ。Tableau Help
-
独自地点名や社内コード:カスタム・ジオコーディングを取り込み、名称→座標を標準化。Tableau Help
16. まとめ:“緯度経度”を制する者が、地図で意思決定を速くする
-
地理ロールでの“生成座標”と、自前座標+MAKEPOINTという二刀流を理解する。
-
MAKELINE/DISTANCE/BUFFER/INTERSECTSで、地点→経路→距離→エリア包含までワンクリックの距離に。Tableau Help+1
-
レイヤー/デュアル軸/カスタム・ジオコーディングを組み合わせ、見たい現象を地図の上に重ねて語る。Tableau Help+2Tableau Help+2
付録:Quickチェック(現場で困ったらここを見る)
-
Lat→Rows、Lon→Columnsになっているか
-
Lat/Lonの順序(MAKEPOINTは緯度→経度)が正しいか Tableau Help
-
SRIDは合っているか(未指定ならWGS84) Tableau Help
-
単位(km/mi/ft/m)を明示しているか Tableau Help
-
点・線・面を役割で分け、レイヤーで重ねているか Tableau Help
📩 専門コンサルタントに相談してみませんか?
Tableauのライセンス選定や運用設計に少しでも不安がある方は、一度プロに相談してみるのがおすすめです。
「どのライセンスを選べばいいか分からない」
「導入したものの活用しきれていない」
「Power BIとの違いを整理したい」
こうしたお悩みに対し、当社ではTableau導入から定着・活用までを一気通貫で支援しています。業種や業務フローに応じた最適なライセンス構成と活用方法をご提案可能です。
▶ 詳細なサービス内容やご相談希望の方は、
こちらの専用ページをご覧ください。
相談は無料です。お気軽にご連絡ください
コメント