「CSVに緯度・経度があるのに地図に点が出ない」「住所は出せるけど精度が足りない」「配送ルートや商圏を地図に重ねたい」——Tableauで“緯度経度マッピング”を確実に成功させる手順と実務ノウハウを、迷いなく実装できるようやさしく・順序立ててまとめました。 tableau 緯度経度 マッピング。地理ロール/生成緯度経度の使い方から、MAKEPOINT/MAKELINE/DISTANCE/BUFFER/複数マークレイヤー/空間ジョインの一通りが、この記事でまとめました。
1. Tableauの“2つの座標アプローチ”を理解する(迷子にならない基本)
Tableauの地図は大きく2つの入り口があります。
-
名称ベース(都道府県名・市区町村名などに地理ロールを付ける)
→ Tableauが生成した緯度・経度で地図化([Latitude (generated)] / [Longitude (generated)])。 -
数値ベース(データに緯度Lat・経度Lonの数値が入っている)
→ そのまま数値として使い、必要に応じて**地理ロール「Latitude/Longitude」**を割り当てる。
精度や自由度(距離計算・線・バッファ等)を最大化したいなら“数値ベース”が王道。以降の空間関数(MAKEPOINT/MAKELINE/DISTANCE/BUFFER/INTERSECTS)は自前の緯度経度が前提です。Tableau Help
2. 最短レシピ:自前の緯度・経度を地図に出す(5ステップ)
STEP 1:データ型
-
Lat
(緯度):-90〜+90、Lon
(経度):-180〜+180。 -
データ型はNumber (Decimal)。文字列なら数値化。
STEP 2:地理ロールの明示
-
データペインで
Lat
を右クリック→Geographic Role → Latitude、Lon
を→Longitude。 -
これでColumns=Lon、Rows=LatでXYとして扱えます。
STEP 3:配置
-
Columnsに
Lon
、RowsにLat
をドラッグ。マークタイプはCircle。 -
DetailにID、Colorにカテゴリを置くと区別しやすい。
STEP 4:検証
-
日本のデータなら北緯26〜45/東経127〜146の範囲にプロットされるはず。
-
北極やアフリカ西岸(0,0付近)に吸い寄せられるなら、Lat/Lon逆転や文字列のままが疑いどころ。
STEP 5:ツールチップ/ラベル整備
-
“なぜそこがその色(状態)なのか”を、数値や日付を交えて表示(説得力UP)。
3. MAKEPOINTで“本物の空間オブジェクト”に変える(空間計算の入口)
緯度・経度の2列を、Tableauの**Geometry(点)**へ変換します。
// 緯度・経度から空間点(Geometry)を作る
[Point] := MAKEPOINT([Lat], [Lon]) // 引数の順序は「緯度 → 経度」
-
構文:
MAKEPOINT(latitude, longitude, [SRID])
-
SRID(座標系ID)を省略すると**WGS84(EPSG:4326)**扱い。投影座標など別系を使うなら第3引数で明示します。
-
注意:
MAKEPOINT
は**生成された[Latitude (generated)]/[Longitude (generated)]**を直接は使えません。元の列を使いましょう。Tableau Help
ここまでで**点(Geometry)**が手に入ります。以降、**線(MAKELINE)・距離(DISTANCE)・バッファ(BUFFER)・包含判定(INTERSECTS)**と“地理らしい分析”が一気に開けます。Tableau Help
4. “点と点を結ぶ”:MAKELINEでOD(Origin–Destination)を描く
出発点と到着点の2座標から**線分(地球上の最短経路:測地線)**を作ります。
[Origin] := MAKEPOINT([Origin Lat], [Origin Lon])
[Dest] := MAKEPOINT([Dest Lat], [Dest Lon])
[Path] := MAKELINE([Origin], [Dest])
-
配置はGeometry([Path])をマークに。色で便種・担当チーム、サイズでボリューム、ツールチップに距離・所要時間を出すと強力。
-
Origin/Destが同一行にある場合はこのやり方が最短です。Tableau Help+1
5. “どれだけ離れている?”:DISTANCEで距離を数値に
2点間の距離をkm/mi/ft/mで返す関数です。
[Distance (km)] := DISTANCE( MAKEPOINT([Lat1],[Lon1])
, MAKEPOINT([Lat2],[Lon2])
, "km")
-
単位は
"meters" "kilometers" "miles" "feet"
等を文字列で指定。 -
商圏閾値・SLA・移動分析の定量化に直結します。Tableau Help
6. “ここから半径rの範囲”:BUFFERで商圏・到達圏を可視化
点から半径rの“円形ポリゴン”を作ります(実体は多角形)。
// 例:半径をパラメータ化(km単位)
[Buffer] := BUFFER( MAKEPOINT([Lat], [Lon]), [半径km], "kilometers")
-
商圏5km・10kmといった“距離で区切った領域”を、面として重ねられます。
-
単位は
"meters" "kilometers" "miles" "feet"
など(DISTANCEと同様)。Tableau Help+1
7. マッピングを“分かりやすく”する:複数マークレイヤー/デュアル軸
1枚の地図に“面+線+点”を重ねると、途端に読み解きやすくなります。
-
複数マークレイヤー(2020.4+):地図の上に別のジオメトリをドラッグすると、左上に**「Add a Marks Layer」のドロップターゲットが出現 → ドロップで独立したレイヤーが追加されます。各レイヤーに個別のマークタイプ/色/ラベル**を設定可能。Tableau Help
-
デュアル・アクシス(Dual Axis):生成座標と自前座標、あるいは異なる表現を2軸重ねで合成する古典テク。レイヤーと併用し、**面(行政界)+点(施設)+線(ルート)**の3役を分担。Tableau
つくり方の定石:
① ベース:**面(エリア)**を“塗りつぶし”
② 第2層:**点(店舗や案件)**を“Circle”、色や形で分類
③ 第3層:線(ルート/商流)を“Line”で重ねる
これで俯瞰→分布→関係の3要素が1画面に整い、意思決定の速度が上がります。
8. ジオコーディングの選択肢:住所から座標、独自地点名の扱い
-
内蔵ジオコーディング:都道府県・市区町村・郵便番号などの名称に地理ロールを付けると、Tableauが生成緯度経度で地図化。手早い一方、精度は名称粒度に依存。
-
カスタム・ジオコーディング:社内コードや独自エリア名は、名称+緯度経度のCSVを“取り込み”→以後その名称で地図化可(大規模展開時はパッケージサイズにも配慮)。
-
混在運用:主は名称ベース、詳細は自前緯度経度、のハイブリッドが現実的。
9. 空間ジョインで“点∈面”を判定(どのエリアに属する?)
「店舗はどの市区町村に属するのか」「顧客はどの商圏に入っているか」を機械的に付与するなら空間ジョイン。
-
エリア側(ポリゴン)の空間ファイルを接続
-
点側データを
MAKEPOINT([Lat],[Lon])
でGeometry化 -
データモデルの結合条件で**Intersects(交差)**を指定
→ 面に含まれる点だけが結びつき、**面の属性(市区町村名・商圏コード等)**を点に持たせられます。Tableau Help
10. データ前処理のコツ(表記・桁・変換)
-
度分秒(DMS)→十進度:
十進 = 度 + 分/60 + 秒/3600
。西経・南緯は負号(-
)。 -
小数点はピリオド(.)、カンマ(,)小数は読み込み誤解釈に注意。
-
桁数の目安:都市分析なら小数第5〜6位(メートル~数十cm相当)。
-
列名は明確に:
Latitude
/Longitude
またはLat
/Lon
。 -
範囲検証:Latが±90超、Lonが±180超なら座標系違いか列取り違え。
11. “実務テンプレ”で即マネ(コピペOK)
11-1. 店舗マッピング(点)+売上階級(色)
[Point] := MAKEPOINT([Lat], [Lon])
// 色分け
[売上ランク] :=
IF SUM([Sales]) < 1e6 THEN "低"
ELSEIF SUM([Sales]) < 5e6 THEN "中"
ELSE "高" END
-
マーク=Circle、Colorに
[売上ランク]
、Sizeに売上、Detailに店舗ID。 -
都道府県ポリゴンをレイヤー1に、店舗点をレイヤー2に重ねて見せます。Tableau Help
11-2. 本社⇄店舗のルート(線)+距離(数値)
[HQ] := MAKEPOINT([HQ Lat],[HQ Lon])
[Store] := MAKEPOINT([Store Lat],[Store Lon])
[Path] := MAKELINE([HQ],[Store])
[距離km] := DISTANCE([HQ],[Store],"km")
-
ルート(線)をレイヤーに追加、色でエリア担当、ツールチップに
[距離km]
。Tableau Help+1
11-3. 商圏(半径rのバッファ)+到達件数(塗り)
// [半径km] はパラメータ
[Buffer] := BUFFER( MAKEPOINT([Store Lat],[Store Lon]), [半径km], "kilometers" )
-
レイヤー1=Buffer(面)、レイヤー2=店舗(点)。不透明度を調整すると重なりが読みやすい。Tableau Help
11-4. 点∈行政界の自動ラベル付け(空間ジョイン)
-
行政界(市区町村ポリゴン)× 顧客点(
MAKEPOINT
)をIntersectsで結び、顧客に市区町村名を付与。集計単位の統一が一気に進みます。Tableau Help
12. “伝わる地図”のデザイン原則(配色・凡例・UI)
-
意味の一貫性:赤=注意/緑=良好/青=中立など、全ダッシュボードで統一。
-
色だけに頼らない:形(Shape)・ラベル・凡例の説明文を併用。
-
レイヤーは役割で分担:面=“文脈”、点=“配置”、線=“関係”。複数マークレイヤーで管理。Tableau Help
-
ズームレベル別の情報量:広域=面と重要拠点のみ、拡大=拠点全件+ラベル。
-
ツールチップの要点表示:数値・基準・期間を短文で。**「なぜこの色か」**が即わかる構成。
13. パフォーマンス最適化(軽く・速く・安定)
-
マーク数の抑制:粒度を段階化(国→都道府県→市区町村→町丁)。
-
抽出(.hyper)、不要列・期間の削減でI/Oを軽く。
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LODや前処理でテーブル計算を減らす(計算の方向設定ミスも減る)。
-
バッファの段階表現やシンボル置換で描画負荷を抑制。
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レイヤー単位で“目玉アイコン(可視/不可視)”管理、用途に応じて切り替え。Tableau Help
14. トラブルシュート(現場でよくある“あるある”)
症状 | よくある原因 | 解決策 |
---|---|---|
北極や(0,0)に点が吸い寄せられる | Lat/Lon逆、文字列のまま | Columns=Lon/Rows=Lat・数値化・範囲チェック |
点が地図に出ない | 地理ロール未設定/Null | Lat→Latitude 、Lon→Longitude を割当。ZN() 等でNull防御 |
距離が想定と合わない | 単位ミス、楕円体差 | DISTANCE(...,"km"/"miles"...) を明示(数式内)。単位を統一。Tableau Help |
線(MAKELINE)が出ない | Origin/Destのペア不整合 | 共通IDで行を揃え、MAKELINE(MAKEPOINT(...),MAKEPOINT(...)) を再確認。Tableau Help |
面+点が重ならない | レイヤー未使用/軸ズレ | 複数マークレイヤーで重ね、マークタイプ・不透明度を調整。Tableau Help |
投影座標のままズレる | SRID未指定 | MAKEPOINT(y,x, EPSGコード) でSRID明示(未指定はWGS84)。Tableau Help |
15. 設計の指針:ビジネスの問い→地理表現に落とす
-
“どこにある?” → 点(MAKEPOINT)
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“どこからどこへ?” → 線(MAKELINE)
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“どれくらい近い/遠い?” → 距離(DISTANCE)
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“この範囲に入る?” → バッファ(BUFFER)/包含判定(INTERSECTS)
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“何と何を重ねて見たい?” → 複数レイヤー/デュアル軸(面・点・線の役割分担)Tableau Help
16. まとめ:Tableauの“緯度経度マッピング”で、現場の意思決定を最短に
-
自前の緯度・経度をMAKEPOINTで空間化し、線・距離・商圏へ展開。
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複数マークレイヤーで“面+点+線”を重ね、俯瞰・分布・関係を1画面で説明。
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**空間ジョイン(Intersects)**でエリア属性を自動付与し、粒度の統一・集計の安定化を実現。
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つまずきやすいLat/Lon順序・単位・SRIDを正しく押さえれば、tableau 緯度経度 マッピングはもう怖くありません。Tableau Help+1
付録:最小チートシート(貼って使える)
// 点
[Point] := MAKEPOINT([Lat], [Lon]) // 緯度→経度(WGS84が既定)
// 線(OD)
[Path] := MAKELINE( MAKEPOINT([O Lat],[O Lon]), MAKEPOINT([D Lat],[D Lon]) )
// 距離(km)
[Dist km] := DISTANCE( MAKEPOINT([Lat1],[Lon1]), MAKEPOINT([Lat2],[Lon2]), "km" )
// バッファ(半径km)
[Buffer] := BUFFER( MAKEPOINT([Lat],[Lon]), [半径km], "kilometers" )
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