「Tableauで条件に応じて色分けしたい」「Excelの条件付き書式のように閾値で色を変えたい」——そんなニーズに対して、Tableauでは“条件式+色シェルフ(Color)”で柔軟に実現します。本記事は、基本〜実務で使う応用パターン、つまずきやすいポイント、色の設計のベストプラクティスまでを、理解しやすさ最優先で網羅的に解説します。
1. 前提:Excelの「条件付き書式」とTableauの違い
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Excel:セル単位に条件を設定し、背景色を変えるイメージ。
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Tableau:“計算フィールド(条件式)でカテゴリや状態を作り、それをColorシェルフに置く”のが基本。
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つまり、色は「数値そのもの」ではなく、「条件の結果(ディメンションや文字列)」に紐付けるのが王道です。数値のグラデーション(連続色)も可能ですが、実務では**「達成/未達」「増加/減少」「危険/注意/安全」といった離散的な状態で色分け**する場面が多いです。
2. 一番やさしい手順(5ステップ)
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条件式の計算フィールドを作る
例:売上が目標以上なら「達成」、未満なら「未達」※ 集計の整合がポイント(後述)。
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作成した計算フィールドをMarks(マーク)カード → Colorにドラッグ。
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色の編集(凡例を右クリック → 色の編集)。ブランドカラーや見やすい配色に変更。
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ラベルやツールチップも整え、「なぜその色なのか」が一目で伝わるように補助情報を加える。
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ダッシュボードで凡例(色)を表示し、説明文や注釈を添えて共有。
3. 基本の条件式レシピ(コピペで使える)
3-1. 達成/未達(2値)
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IIF
は1行で書けて読みやすい。NULL
があり得る場合はZN()
で0埋めすると安全です。
3-2. 増加/減少(前期比)
月ごとの売上が前月より増えたら緑、減ったら赤など。
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これはテーブル計算を含むため、**アドレッシング(計算の方向)**を月の並びに合わせて調整します(表計算の編集で設定)。
3-3. 範囲別(3〜5段階)
3-4. CASEでスッキリ(TRUE()パターン)
階層が増えるとIF/ELSEIF
は長くなりがち。CASE TRUE()
で読みやすく。
3-5. NULLを明示的に扱う
3-6. 目標をパラメータでユーザー入力化
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数値パラメータ
[しきい値]
を作成 -
色分け式:
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パラメータアクションでダッシュボード上から閾値を直接調整できるようにすると、現場の探索が加速します。
4. 連続色(グラデーション)と「段階あり」の使い分け
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連続色(グラデーション):分布の“強弱”を直感的に見たいとき。ヒートマップや地図の濃淡に有効。
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段階あり(ステップ):しきい値で管理したいとき。“危険/注意/安全”のように離散化して誤読を防ぐ。
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凡例のメニュー → 色の編集 → ステップにチェック → 段階数を設定。
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発散色(Diverging):基準(0や前年)からのプラス/マイナスを強調したいときに最適。中心点(走査中心)を0や前年値に合わせて設定。
5. 実務でよく使う“色分け × 条件式”10パターン
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売上 vs 目標:達成=青/未達=赤
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在庫 vs 安全在庫:下回る=赤/OK=グレー
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粗利率の水準:<0%=赤、0–10%=橙、10–30%=黄、30%+=緑
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クレーム件数の推移:前月比増=赤/減=青
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SLA(応答時間):>規定=赤、<=規定=緑
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達成度ランク(五段階):最小値〜最大値を5ステップに分割
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パーセンタイル:上位20%=濃色、下位20%=淡色
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YoY(前年同月比):0%以上=緑/未満=赤
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滞留日数:>30日=赤、8–30日=黄、<=7日=緑
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異常値フラグ:平均±3σを超過=赤(テーブル計算で平均と標準偏差を算出)
6. 地図やヒートマップでの条件式のコツ
6-1. 地図(都道府県・県別)
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色は連続色が直感的。ただし極端値があると他が潰れるので、分位やステップで調整。
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**二変量(売上×粗利)**を同時に伝えたいときは、カテゴリを合成して色分け:
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Color
に[二変量カテゴリ]
を置いて9セルの配色表を作ると、意思決定が速くなります。
6-2. ヒートマップ(行×列の交点で色付け)
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**マークタイプを「スクエア」**にして、Sizeを広げると“格子状”で見やすい。
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連続色を使う場合でも、ステップを有効にして3〜7段階にすると解釈が安定。
7. LOD表現で“集計レベルのズレ”を制御する
「集計レベルの違い」は色分けの落とし穴。例:各製品の売上をカテゴリ内比率で色分けしたいなら、カテゴリ合計をLODで固定。
この比率に基づき以下のように段階化:
LODで**“どの合計と比較しているのか”**を明確化すると、色分けがブレません。
8. 集計の整合:よくあるエラーと対処
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集計済みと非集計の混在
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IF SUM([Sales]) > [Target] THEN ...
はNG(左が集計、右が非集計)。 -
対策:
SUM([Target])
にするか、ATTR([Target])
/MIN([Target])
で粒度を合わせる。
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テーブル計算 × 行列の方向が合わない
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LOOKUP
やRANK
を使った式は、表計算の編集でアドレッシング/パーティションを正しく設定。
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NULLで判定が落ちる
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ZN()
やIFNULL()
でガード。
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True/Falseの配色が逆転
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凡例の並び順と色の割当を確認。
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9. 色設計のベストプラクティス(“伝わる”が最優先)
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意味の一貫性:赤=警告、緑=OK、青=中立など、全ダッシュボードで共通に。
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色だけに頼らない:形(Shape)、ラベル、凡例の説明も併用。
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色数は3〜7以内:人が識別できる色の限界を意識。5段階程度が現実的。
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色弱フレンドリー:赤/緑の組合せは避けるか、明度差を大きく。青/橙なども有効。
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背景/文字のコントラスト:可読性を最優先(暗背景×淡文字、明背景×濃文字)。
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既定のプロパティ → 色でフィールドのデフォルト配色を設定し、全ワークシートで統一。
10. “段階設計”の考え方(ビジネスロジックを色に落とす)
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静的なしきい値:SLA、法令・契約で決まっている基準値。
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動的なしきい値:直近3か月平均や前期比など、相対評価で変動。
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ベンチマーク比較:市場平均、カテゴリ平均、上位四分位との比較。
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分布ベース:パーセンタイルやクラスターで自然な区切りを作る。
上記のどれを採用するかは、意思決定の文脈と説明責任で決めます。現場合意を取り、凡例に定義文を明記しましょう。
11. ダッシュボード連携:色→行動を生む仕掛け
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ハイライトアクション:色で目立たせた項目をクリック → 明細表や地図が連動。
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パラメータアクション:カードを操作して閾値や期間を動的変更。
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凡例のフィルター:凡例で“未達だけ表示”のチェックボックス運用。
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説明カード:色の意味・しきい値の定義を固定で表示し、誤読を防止。
12. パフォーマンス配慮(速く、安定して動かす)
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計算はシンプルに:ネストが深いIFを
CASE TRUE()
に置き換える。 -
重いテーブル計算を乱用しない:前処理や抽出、LODの活用も検討。
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フィルターの順序:コンテキストフィルターでデータ量を先に絞る。
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公開前のレビュー:サーバ/クラウドで応答時間を実測し、閾値ステップ数や明細数を調整。
13. よくあるUI操作(手順メモ)
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色の編集:凡例右クリック → 色の編集。
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色のステップ:色の編集ダイアログ → ステップにチェック。
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配色の反転:同ダイアログの反転。
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フィールド既定の色:データペインで該当フィールド右クリック → 既定のプロパティ → 色。
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凡例の表示/非表示:ワークシートメニュー → 凡例。
14. ミニ・チートシート(貼って使える)
2値(達成/未達)
3段階(危険/注意/安全)
前月比(増/減)
分位(上位/中位/下位)
カテゴリ内比率(LOD)
15. 事例別の見本(短時間でマネできる)
15-1. 営業KPIダッシュボード
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リードの温度感:
IF [Lead Status] IN ("MQL","SQL") THEN "重視" ELSE "通常" END
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案件確度(%)で段階色:
IF AVG([Prob]) >= 0.8 THEN "高" ELSEIF AVG([Prob]) >= 0.5 THEN "中" ELSE "低" END
15-2. 在庫/物流
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滞留日数:
IF AVG([Days in Stock]) > 30 THEN "長期滞留" ELSEIF ... THEN "注意" ELSE "良好" END
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欠品リスク:
IIF(SUM([On Hand]) < SUM([Forecast]), "リスク高", "許容")
15-3. CS/コールセンター
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応答SLA:
IIF(AVG([Response Sec]) <= [SLA Sec], "遵守", "違反")
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NPS分布:
IF AVG([NPS]) >= 9 THEN "推奨者" ELSEIF AVG([NPS]) >= 7 THEN "中立" ELSE "批判者" END
16. 品質を上げる“最後のひと手間”
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ラベルに条件の理由を出す(例:「未達(売上950万/目標1000万)」)
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凡例の順序を論理順(危険→注意→安全)に整える。
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色の意味を固定文で明示(ダッシュボード上に「色の定義」テキストを置く)。
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色弱チェック(赤/緑は避けるか明度差を確保)。
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データ更新頻度と閾値の棚卸し(四半期ごとに妥当性を見直す)。
17. まとめ:条件式で「意思決定のための色」をつくる
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Tableauの色分けは条件式で“状態”を作るのが基本。
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IF/CASE/IIF/LOD/表計算/パラメータを使い分ければ、ほぼすべての実務要件をカバー可能。
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**配色設計(意味の一貫性・色数・コントラスト・色弱配慮)**まで含めて、初めて“伝わるダッシュボード”になります。
付録:トラブル早見表
症状 | よくある原因 | 対処 |
---|---|---|
集計/非集計混在のエラー | SUM() と生値の混在 |
粒度を合わせる(SUM() or ATTR() ) |
前月比が正しくでない | 表計算の方向不一致 | 表計算の編集で“月”方向に設定 |
すべて同じ色になる | 条件の結果が単一 | しきい値・フィルター・粒度を見直し |
NULLで色がつかない | 判定前に落ちる | ZN() /IFNULL() で防御 |
色が逆転して見える | 凡例の順と割当 | 凡例の色編集で入れ替え |
おわりに
本記事では、Tableauの色分けを条件式で自在に操るための考え方とレシピを、実務の視点で整理しました。ここまでの式や手順をベースに、まずは既存ダッシュボードの1枚で**「色=意思決定」**に直結する改善を試してみてください。きっと効果を実感できるはずです。
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