はじめに
Tableauは、複雑なデータを直感的に可視化するための強力なBIツールです。その中でも「二重軸」は、異なる指標を1つのグラフ上にまとめて比較する際によく利用されます。しかし、実際のビジネス分析では「売上」「利益」「広告費」「顧客数」といった複数のKPIを一度に比較したい場面も多く、二重軸だけでは表現しきれないことがあります。
そこで注目されるのが、三重軸や4重軸といった多重軸の可視化です。Tableauでは標準機能として「二重軸」までしか用意されていませんが、工夫次第で3重軸、4重軸の表現を実現することが可能です。
本記事では、Tableauで4重軸を表現する方法を具体的に解説し、実務で役立つシナリオや注意点、代替アプローチまで幅広く紹介します。
1. Tableauにおける軸の基本
Tableauの可視化では「行シェルフ」と「列シェルフ」にメジャーを配置して軸を作成します。
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単一軸:1つの指標を折れ線や棒グラフで表示。
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二重軸:2つの指標を重ねて表示(左軸と右軸)。
二重軸は「売上と利益を同時に表示」するなど、よく使われる機能です。しかし、三重軸や4重軸は公式には存在しません。そのため「色」「サイズ」「形状」といったマークのエンコードを組み合わせ、軸の代替表現を作り出す必要があります。
2. 4重軸を作るための考え方
4つの指標を同時に表現するためには、次の工夫を組み合わせます。
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二重軸をベースに作成(X軸・Y軸+二重軸)。
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3つ目・4つ目を「色」「サイズ」で表現。
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必要に応じて「形状」や「ラベル」も活用。
つまり「4つの異なる軸を持つのではなく、見た目上4種類の情報を1つのグラフに重ねる」アプローチです。
3. Tableauで4重軸を実現する手順
例として「売上」「利益」「広告費」「顧客数」を同時に可視化するケースを考えてみましょう。
ステップ1:二重軸を作成
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列に「日付」を配置。
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行に「売上」を配置。
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行に「利益」を追加。
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右クリックで「二重軸」を選択。
これで「売上(棒)+利益(折れ線)」の二重軸が完成します。
ステップ2:3つ目を追加(広告費)
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「広告費」を行シェルフに追加。
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グラフタイプを「折れ線」に変更。
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軸を同期化、または右軸に表示。
これで実質的に三重軸が完成します。
ステップ3:4つ目を追加(顧客数)
ここで「顧客数」を色やサイズで表現します。
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「顧客数」をマークの「サイズ」にドラッグ。
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または「色」に配置し、顧客数の大小をグラデーションで表現。
→ これにより 棒(売上)、折れ線(利益・広告費)、サイズ(顧客数) の4重軸が完成します。
4. 表現方法のバリエーション
Tableauで4重軸を作る際は、単に重ねるのではなく「どう表現するか」がポイントになります。
① 棒+折れ線+バブル
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売上 → 棒
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利益 → 折れ線
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広告費 → 折れ線(別色)
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顧客数 → バブル(サイズで表現)
② 散布図型4重軸
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X軸 → 広告費
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Y軸 → 売上
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サイズ → 顧客数
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色 → 利益率
散布図をベースにすることで「多変量分析」を直感的に行えます。
③ スモールマルチプル型
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2つの軸(売上と利益)を主に表示。
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3つ目(広告費)を色、4つ目(顧客数)を形状に分解。
カテゴリーごとに小さな散布図を並べて比較する方法です。
5. 実務での活用事例
事例① デジタルマーケティング効果分析
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売上(棒)
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利益(折れ線)
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広告費(折れ線)
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顧客数(サイズ)
広告費が売上や利益にどう影響しているかを、顧客数も含めて一度に把握できます。
事例② 小売業の販売データ
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売上(棒)
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来店数(サイズ)
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気温(折れ線)
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販促費(折れ線)
「天候×販促費×来店数」が売上に与える影響を多角的に分析できます。
事例③ 製造業の生産管理
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生産数(棒)
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稼働率(折れ線)
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不良率(色)
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設備稼働時間(サイズ)
複雑な生産データを一枚で俯瞰でき、改善施策を立てやすくなります。
6. 注意点と落とし穴
4重軸は便利ですが、リスクもあります。
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複雑すぎて読みにくい
4つ以上の要素を同時に見せると、ユーザーが混乱しやすい。 -
スケールの不一致
売上(円)と顧客数(人数)、不良率(%)を同じ軸に並べると誤解を招く可能性あり。 -
過剰な情報量
KPIを詰め込みすぎると分析の焦点がぼやける。重要な指標を選び、残りは補足に回す工夫が必要。
7. 代替アプローチ
本格的に4つ以上の変数を扱う場合、必ずしも「4重軸」に固執する必要はありません。
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ダッシュボードで複数グラフを連動
→ 各グラフに2〜3変数を表示し、フィルターで同時に動かす。 -
散布図+色+サイズで3〜4変数を表現
→ 視覚的に分かりやすい。 -
参考線やバンドを追加
→ 4つ目の指標を「参考線」として補足。 -
Tableauのパラメータやセットを活用
→ ユーザーが切り替えて比較できるようにする。
まとめ
Tableauは標準で「二重軸」までしか対応していませんが、色・サイズ・形状などのマーク属性を工夫すれば、実質的に4重軸を実現可能です。
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二重軸をベースに、3つ目・4つ目を色やサイズで追加。
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棒+折れ線+サイズ+色の組み合わせで4変数を同時に表現。
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マーケティング、販売分析、生産管理など幅広い業務に応用可能。
ただし「複雑になりすぎて読みにくい」という課題があるため、利用する際は「伝えたいポイント」を絞り、補足説明やダッシュボード連携でバランスを取ることが重要です。
4重軸を使いこなせば、単なる可視化を超えて「多次元データから深い洞察を得る」ための強力な手段となります。
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