データ分析の現場では「時間の粒度」をどの程度にするかが重要なテーマとなります。日単位、週単位、月単位の分析は一般的ですが、より詳細に「30分ごと」にデータを確認したい場面も多いはずです。
例えば次のようなケースです:
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ECサイトのアクセス解析:時間帯によるアクセス集中を把握する。
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コールセンター業務:30分単位での受電件数を確認し、スタッフ配置を最適化する。
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小売店舗の来客データ:ピークタイムを把握してキャンペーン施策に活用する。
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IoTやセンサー情報:30分刻みで取得したデータを時系列で分析する。
Tableauは柔軟な時間データ処理が可能であり、標準の日付階層(年、月、日、時間、分)に加え、カスタムで30分ごとの区切りを設定できます。この記事では、Tableauで30分ごとのデータを扱う具体的な方法、設定のポイント、応用例を詳しく解説します。
1. Tableauにおける時間データの扱い
Tableauでは、日付や時間を持つフィールドを「日付型(Date/DateTime)」として認識します。これにより以下のような階層的な分解が可能です。
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年
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四半期
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月
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週
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日
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時間(Hour)
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分(Minute)
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秒(Second)
デフォルトでは「分」単位まで表示できますが、「30分ごと」という粒度は標準設定では存在しません。したがって、自分でカスタムの計算式を作成して扱う必要があります。
2. 30分ごとの時間区切りを作成する方法
Tableauで30分ごとの時間区切りを作るには、計算フィールドを使います。代表的な方法を紹介します。
方法① FLOOR関数を使う
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データペインで「計算フィールド」を作成。
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以下の式を入力:
解説:
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DATETRUNC('hour', [日時])
→ 時間単位で切り捨て。 -
DATEPART('minute', [日時]) / 30
→ 分を30で割って整数化。 -
* 30
で30分刻みに丸める。 -
/1440
は「1日=1440分」を基準に分を日付形式に変換。
この結果、「0分または30分単位」に丸められた日時が得られます。
方法② IF文で分岐する
より直感的に設定する場合は次のように記述できます。
この式では「0~29分 → その時間の0分」「30~59分 → その時間の30分」に変換されます。
3. 可視化の実例
例① アクセスログのトラフィック分析
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ディメンション:30分ごとの時間区切り(計算フィールド)
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メジャー:セッション数
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表示形式:折れ線グラフ
これにより「どの30分がアクセス集中時間か」を把握できます。ECサイトやアプリの利用ピークを特定するのに役立ちます。
例② コールセンターの受電件数
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ディメンション:30分ごとの時間
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メジャー:コール数(件数)
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表示形式:棒グラフ+折れ線グラフ(前週比較など)
これを使えば「昼休み明けに受電が増える」「夕方に急増する」といった傾向を明確に掴めます。
例③ 小売店の来店客数
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ディメンション:30分区切り
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メジャー:来店人数
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補助指標:売上金額
二重軸を使って「来客数と売上の関係」を時間帯別に分析することで、販促施策の最適化に繋がります。
4. ダッシュボード設計のポイント
30分ごとのデータは粒度が細かいため、グラフの見せ方にも工夫が必要です。
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ラベルを間引く
30分ごとだと軸ラベルが多すぎるため、2時間ごとに表示するなど工夫する。 -
曜日や日別でフィルターする
全データを出すと視認性が落ちるため、日付や曜日で絞り込む。 -
ピークを強調する
ハイライトや参考線を使い「最大値の時間帯」を強調すると読みやすい。 -
比較軸を追加する
前日・前週比などを二重軸で重ねると、傾向分析に役立つ。
5. 30分区切りデータの応用シナリオ
① マーケティング施策の最適化
SNS投稿やメール配信のタイミングを「30分ごとの反応率」で検証することで、エンゲージメントが最大化する時間帯を特定できます。
② 業務効率改善
工場や物流拠点では「作業件数」を30分単位で可視化することで、ボトルネック時間を発見できます。
③ ヘルスケア・ライフログ
心拍数や歩数などのデータを30分ごとに記録することで、生活リズムを可視化し、健康管理に活用できます。
6. よくある課題と解決策
課題① データ量が多すぎて処理が重い
→ 対応策:抽出データを利用し、必要な範囲だけにフィルタリング。
課題② 粒度が合わないデータが混在
→ 対応策:日次や時間単位のデータを30分区切りに変換、または集計単位を揃えてから統合。
課題③ ユーザーにとって分かりにくい
→ 対応策:色分け、注釈、参考線を使い「重要な時間帯だけ強調」。
まとめ
Tableauを使えば、標準機能では用意されていない「30分ごとの時間区切り」も、計算フィールドを工夫することで実現できます。
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DATETRUNC
やDATEPART
関数で30分単位に丸める -
可視化では軸やラベルを工夫して見やすさを維持
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実務ではアクセス解析、コールセンター、来店分析、IoTなど幅広く活用可能
細かい時間粒度で分析することで、これまで見えなかった「隠れたピーク」や「改善ポイント」が浮き彫りになります。30分単位の可視化を取り入れれば、より実践的で価値のあるデータ分析が可能になるでしょう。
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