1. はじめに|「100%積み上げ棒グラフ」とは?
Tableauを使って複数カテゴリのデータを比較する際、よく利用されるのが「積み上げ棒グラフ(Stacked Bar Chart)」です。その中でも、「100%積み上げ棒グラフ(100% Stacked Bar)」は構成比を比較するための定番チャートです。
✅ 特徴:
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全体を100%としたときの構成比を視覚的に比較できる
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各要素の「割合」の推移や差異をひと目で把握できる
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数値そのものではなく、バランス・比率を重視する時に最適
🔍 たとえばこんなケースで活躍:
分析対象 | 100%積み上げが有効な理由 |
---|---|
地域別の製品構成 | 地域ごとの売上合計は異なるが、構成比を見たい |
年代別アンケート結果 | 選択肢ごとの割合変化を比較したい |
月別チャネル比率 | どのチャネルが優勢か推移を知りたい |
2. 通常の積み上げグラフとの違い
グラフタイプ | 表す内容 | 高さの意味 |
---|---|---|
積み上げ棒グラフ | 実数の合計とカテゴリ構成 | 実際の合計値(変動) |
100%積み上げ棒グラフ | 割合のみで構成比を比較 | 常に100%(固定) |
3. Tableauで100%積み上げ棒グラフを作る基本ステップ
Tableauでは、100%積み上げ棒グラフはShow Me(ショーミー)機能で簡単に作成できます。ここではその基本的な操作方法をステップごとに解説します。
✅ ステップ1:データの準備
まずは以下のようなカテゴリ × 項目 × 数値形式のデータを用意します。
地域 | 製品カテゴリ | 売上 |
---|---|---|
東京 | A | 1000 |
東京 | B | 500 |
大阪 | A | 800 |
大阪 | B | 700 |
このようなデータをTableauに取り込むことで、構成比を可視化できます。
✅ ステップ2:シートに項目を配置
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「列」に比較したい軸(例:地域や月)をドラッグ
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「行」に**SUM(売上)**などの集計対象の数値を配置
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「色」にカテゴリ(例:製品カテゴリ)をドラッグ
これで、通常の積み上げ棒グラフが表示されます。
✅ ステップ3:100%積み上げに切り替える
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右上の「Show Me」パネルを開く
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「100% Stacked Bar」を選択(縦・横どちらでも可)
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グラフが「合計 = 100%」として再描画され、各色(カテゴリ)が比率として表示される
✅ ステップ4:ツールチップとラベルを調整
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ツールチップに「比率(%)」を表示することで理解が深まる
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「マーク」→「ラベル」→「割合表示」を有効にすれば、割合数値(%)も棒の上に表示可能
4. 割合(%)の数値を明示的に表示したい場合の工夫
デフォルトでは、「棒の色」や「比率の長さ」で構成比を視覚的に伝えていますが、具体的な割合(例:40%)を表示すると、より正確な情報伝達ができます。
✅ 計算フィールドを使う方法
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メニュー → 「計算フィールドを作成」
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以下のような式を作成:
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作成したフィールドを「ラベル」や「ツールチップ」に追加し、表示形式を「パーセンテージ」に設定します
注意点:
TOTAL()
関数はビュー内の合計値に対して割合を計算するため、フィルターやビジュアルの構成に依存します。
5. 横型 vs 縦型の違い|どちらが効果的?
✅ 横型(横方向100%積み上げ)
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項目数が多いときに便利
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比率の差が視覚的に比較しやすい
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ラベルが横に並ぶので見やすい
✅ 縦型(縦方向100%積み上げ)
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時間軸(年月推移)との相性が良い
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トレンドを可視化したい場合に効果的
6. Tableauの100%積み上げ棒グラフ|実務での活用事例
📊 ① マーケティング:チャネル別構成比
マーケティングチームでは、リード(問い合わせ)やコンバージョンのチャネル別構成比を把握する必要があります。
100%積み上げ棒グラフを使えば、「検索広告」「SNS広告」「オーガニック流入」などの割合を月別に可視化でき、傾向の変化や施策の効果を直感的に把握できます。
🧑💼 ② 人事:離職理由の構成比分析
人事部門では、離職理由のカテゴリ別割合(例:給与・人間関係・異動など)を年度や部署ごとに可視化できます。
数値では見落としがちな傾向も、「構成比」として比較することで具体的な対策案の根拠になります。
📦 ③ 在庫管理・物流:カテゴリ別在庫比率
在庫や出荷データにおいて、「製品カテゴリごとの構成比」を100%で可視化することで、特定カテゴリの占有度や偏りを把握できます。
在庫最適化や需要予測にも役立ちます。
7. フィルター利用時の注意点とTOTAL関数の落とし穴
100%積み上げ棒グラフでは、比率の正確性が重要です。しかし、フィルターを使用した場合、意図しない比率表示になることがあります。
✅ よくあるトラブル:「構成比が100%にならない」
原因:
-
TOTAL()
関数がフィルター後のデータに対して合計を計算している -
表示中のカテゴリだけで割合を算出してしまっている
✅ 解決方法1:「表計算フィルター」ではなく「コンテキストフィルター」を使う
-
TOTAL()
は「表示レベル」に応じて集計されるため、コンテキストフィルター(右クリック→「コンテキストに追加」)を使うことで、正しく100%を維持できます。
✅ 解決方法2:LOD計算で比率を固定
このようにLOD(Level of Detail)式を使うことで、フィルターの影響を受けない固定値で構成比を計算できます。
8. よくある表示トラブルとその対処法
❗ トラブル①:小さい比率が見えない/ラベルが重なる
対処法:
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「ラベルの最小表示サイズ」を調整
-
ツールチップに詳細を表示し、ラベルは割合が大きいものだけに絞る
-
表示を横型(バー)に切り替えることで、重なりを解消しやすくなる
❗ トラブル②:0%の項目が表示されない
対処法:
-
「すべての値を表示」を右クリックでオンにする
-
ZN()
やIFNULL()
で明示的に「0」として処理する
❗ トラブル③:TOTALが部分的に崩れる(100%にならない)
対処法:
-
表計算を明示的に設定(「合計に対する割合」を使用)
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フィルターと表計算の適用順序を見直す
9. ダッシュボードでの「見せ方」の工夫
100%積み上げ棒グラフは、補助的な構成比グラフとしての役割が強く、メインの数値グラフと組み合わせることでより効果的です。
✅ 工夫1:数値グラフと構成比グラフを並べて表示
例)売上金額の棒グラフ + 構成比の100%積み上げ
→ 「売上の増減」と「カテゴリ構成の変化」の両方が同時に把握できる
✅ 工夫2:フィルター付きダッシュボードで部門や期間を切り替え
インタラクティブなフィルターを活用し、部門や地域、期間別に構成比を比較できるUIにすることで、実用性が大幅にアップします。
✅ 工夫3:色使いに一貫性を持たせる
構成比のグラフでは「色」が意味を持つため、全ページ共通のカラールールを設定し、視認性・理解力を高めましょう。
10. まとめ|100%積み上げ棒グラフを使いこなすと「分析の質」が変わる
Tableauで100%積み上げ棒グラフを活用すれば、単なる数値の比較ではなく、“構成や変化の理由”を伝えるビジュアル化が可能になります。
✅ 本記事のおさらい:
項目 | 内容 |
---|---|
基本操作 | Show Me機能で簡単に作成可能 |
比率表示 | ZN関数・TOTAL関数・計算フィールドで比率可視化 |
フィルター注意 | コンテキスト or LODで正確な100%を維持 |
活用シーン | マーケ、営業、人事、在庫など多分野で有効 |
トラブル対策 | ラベル・色・表示順序などで視認性アップ |
「割合を見る力」は、ビジネスの洞察力を飛躍的に高めてくれます。
Tableauを使って100%積み上げ棒グラフを自在に操れるようになれば、プレゼンの説得力も、社内の意思決定力も格段に向上します。
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