はじめに
企業が行う活動の中で、「案件管理」は非常に重要なプロセスです。案件管理と一口に言っても、営業が扱う商談(パイプライン)管理から、プロジェクトの進捗管理・コスト管理など、その業務内容は多岐にわたります。しかし、案件の内容やステータスがエクセルやメール、口頭ベースで散在していないでしょうか? あるいは、社内システムからのデータは溜まっているものの、「可視化に時間と手間がかかりすぎる…」と悩んでいないでしょうか?
MicrosoftのBI(Business Intelligence)ツール「Power BI」を使えば、こうした課題を解消し、案件管理をリアルタイムかつ直感的に行うことが可能になります。本記事では、営業活動・プロジェクトなど様々な観点での案件管理をPower BIで実践するメリットや具体的な方法を解説します。
1. なぜPower BIで案件管理が便利なのか
1-1. 多様なデータソースをまとめて扱える
案件管理では、CRMやExcelファイル、メールやチャットログ、社内基幹システムなど、複数のソースからデータを取り込むシーンが多いです。Power BIは以下のように幅広いデータソースに対応しています。
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Excel/CSV/SharePoint Online/OneDrive
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SQL ServerやOracleなどのRDBMS
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クラウドCRM(Salesforceなど)
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他のSaaSサービスとの連携(Dynamics 365、Google Analytics等)
これらを一元的に集約し、統合・可視化することで、部署や担当者間の情報ギャップを減らし、意思決定のスピードを上げられます。
1-2. インタラクティブなダッシュボードで状況把握
Power BIのレポートビューは、ドラッグ&ドロップ操作で棒グラフ・折れ線グラフ・円グラフ・ゲージなど多様なビジュアルを配置できるため、案件の進捗や売上見込みをひと目で把握しやすくなります。スライサーを使って担当者や時期、顧客業界などのフィルターをかければ、リアルタイムにグラフが変化するため、「気になるポイントをすぐに深掘り」できるのが強みです。
1-3. 自動更新とチーム共有
Power BI Service(オンライン版)と連携すれば、レポートを定期的(例えば毎日・毎時間)に自動更新し、常に最新情報に基づいて案件を管理できます。さらに、URLやTeams、社内ポータルなどへ埋め込んで共有すれば、社内の関係者全員が同じデータを共通認識として閲覧できるようになります。メール添付やExcelのバージョン違い問題といった非効率が解消し、会議や打ち合わせでも素早く意思決定できるでしょう。
1-4. ノーコードでの前処理と高度な分析
Power BIのPower Queryエディターを使えば、案件データのクリーニング(重複・欠損値処理、列の分割・結合など)をノーコードに近い操作で実施可能。また、DAX(Data Analysis Expressions)を活用すれば、月別の売上予測や担当者別の達成率、案件ごとの優先度指標などを柔軟に作成できます。さらにRやPythonとの連携で、機械学習を用いた受注確度予測など高度な分析へ発展させることも可能です。
2. 案件管理におけるPower BI活用例
2-1. 営業案件(パイプライン)管理
営業活動のなかで、商談・見込案件を管理する際にPower BIが非常に有効です。
具体的な指標・可視化例
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フェーズ・ステータス別件数:アポイント取得、提案中、見積提示済み、交渉中、受注/失注など
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売上見込み額の推移:案件のステータス変化に応じた金額合計を月次や四半期ベースで表示
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担当者・チーム別の達成率:目標値(Quota)と受注額・受注件数の比較
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失注分析:失注理由(価格・競合・時期等)ごとに数値を集計し、営業戦略の課題を探る
これらを可視化し、スライサーで顧客業種・期間・担当者などを切り替えることで、どの顧客層に強いのか、どのステータスで停滞しているのかを素早く把握でき、具体的な打ち手を検討しやすくなります。
2-2. プロジェクト案件管理
開発やコンサルティング、建設などのプロジェクト案件では、進捗状況・作業工数・原価/利益率などを見える化することが重要です。
具体的な指標・可視化例
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進捗率ガントチャート:カスタムビジュアルを使ってタスクごとの期間・進捗を一目で把握
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予算実績対比:見積時の想定工数やコストと、実際の消化状況を比較
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メンバー工数管理:各担当者がどれだけ工数を割いたか、残タスク量はどのくらいか
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リスク分析:遅延リスクや追加コストリスクが高まっているプロジェクトの早期発見
これにより、プロジェクトマネージャーやリーダーがボトルネックを早めに認識し、対策を講じやすくなるほか、予算・利益管理もリアルタイムで把握しやすくなります。
2-3. アフターサービスやサポート案件管理
製品やサービスの保守契約やサポート案件の管理でも、Power BIを活用できます。
具体的な指標・可視化例
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対応件数・対応時間:問い合わせ件数や解決までの日数(SLA compliance)、担当者別の対応状況
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不具合カテゴリや問い合わせ原因別の分布:製品・サービスの問題点を早期に把握
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継続率:保守契約の更新率、退会率など
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カスタマーサクセス指標:NPSやCSATスコアの推移
これらを可視化すれば、顧客満足度を高める施策を素早く検討でき、継続率向上やサポートコストの適正化につなげられます。
3. Power BIを使った案件管理レポート構築の手順
3-1. データモデルを設計する
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データソースの特定:案件情報が格納されているCRMやExcel、社内DBなど
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データを取り込む:Power BI Desktopで「データの取得」をクリックし、各ソースに接続
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Power Queryで整形:不要な列の削除や日付列の変換、重複除去、カテゴリ列の整備など
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リレーションシップ設定:
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「案件テーブル」と「担当者マスタ」「顧客マスタ」「日付テーブル」などをキーで結ぶ
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販売実績や工数、サポート情報など複数テーブルを一元的に紐づける
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3-2. ビジュアル化とDAXメジャー
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レポートビューでビジュアル配置:棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、カードビジュアル、テーブルなど
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必要な指標(メジャー)を作成:
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SumOfSales = SUM(案件テーブル[金額])
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CountOfProject = COUNTROWS(案件テーブル)
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AverageLeadTime = AVERAGEX(案件テーブル, 案件テーブル[経過日数])
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CALCULATEやFILTERで特定ステータスだけを集計…など
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スライサーの設定:
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担当者名、顧客業種、フェーズ、期間など
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クリック操作で対象を絞り込み、ダッシュボード全体が連動
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3-3. レポート共有と自動更新
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Power BI Serviceへパブリッシュ:ローカルPCで作ったレポートをクラウドに公開
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アクセス権限の付与:チームメンバー、上司、他部署などに閲覧or編集権限を設定
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データの自動更新設定:Power BIゲートウェイを通じて、1日1回や毎時間の定期リフレッシュを行う
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TeamsやSharePointへの埋め込み:会議やチャットツールで常に最新レポートを共有できる環境を作る
4. 運用上のポイントとベストプラクティス
4-1. 案件データの粒度や定義を明確に
「案件」といっても、商談ベースで見るのか、注文ごとに見るのか、開発プロジェクトで見るのかなど、企業ごと・部署ごとに定義が異なる場合が多いです。データ集約前に粒度・管理単位・進捗フェーズなどを標準化し、マスタをきちんと整備することが重要です。
4-2. フィールド更新や入力ルールの徹底
営業担当者やプロジェクトリーダーが入力するフィールド(ステータス、金額、開始日、終了日など)が常に最新の正確な情報になるよう、運用ルールを社内で合意し、必要に応じてシステム連携や入力チェックを強化しましょう。Power BIのレポートの精度は、元データの品質に大きく左右されます。
4-3. セキュリティとアクセス制限
案件情報は商談金額や顧客情報、契約情報など機密度が高いケースが多いです。Power BIのロールレベルセキュリティ(RLS)を活用し、
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担当者ごとに閲覧可能な案件だけを表示
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部署ごとに見せられる指標・列を制限
といったセキュアな運用設計を行い、情報漏えいリスクを防ぎましょう。
4-4. 適宜ダッシュボードを改善・拡張
案件管理では、事業の進化や顧客ニーズの変化に応じて、追うべき指標や項目も変わっていきます。少なくとも四半期ごとなど定期的にレポートを見直し、不要になった項目や新たに追加すべきメジャーをアップデートしていくことで、常に使いやすいダッシュボードを維持できます。
5. まとめ
Power BIを活用して案件管理を可視化することで、以下のような効果が期待できます。
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情報の集約:複数のツール・ファイルに散乱していた案件情報を一元管理
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迅速な意思決定:リアルタイムなデータに基づき、経営層や営業/PMリーダーが即座に判断
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マネジメントの強化:営業案件の停滞ポイントやプロジェクトの遅延リスクを早期に発見
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コミュニケーション円滑化:同じダッシュボードを見ながら具体的な打ち手を議論可能
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拡張性:R/Python連携やAIビジュアルで高度な予測・分析が可能
「案件管理に時間と手間がかかる」「Excelベースでは最新情報を追いきれない」といった悩みがあるなら、まずはPower BI Desktopを使って小規模なデータからダッシュボードを試作してみましょう。成功体験を積んだら、データ連携や運用体制を拡大し、全社的な案件管理をデータドリブンに変えていくことが可能です。ぜひPower BIの力を活用して、案件管理の精度・効率をワンランク上げてみてください。
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