はじめに
Power BIは、Microsoftが提供するデータ可視化ツールとして広く利用されています。さまざまな種類のビジュアルを簡単に作成できるのが魅力ですが、その中でも「塗り分け地図(Filled Map)」は地理情報を直感的に把握するための強力な手段です。本記事では、Power BIを用いた日本の「塗り分け地図」の作成方法を解説しながら、つまずきがちなポイントや注意点をわかりやすく紹介します。
塗り分け地図(Filled Map)とは?
塗り分け地図(Filled Map)は、特定の地域ごとの数値やカテゴリ情報を地図上で色分け表示し、視覚的に比較できるグラフです。売上や人口などの指標を都道府県単位、さらには市区町村単位で色の濃淡や色分けによって表すことで、地域差の把握が非常に容易になります。
Power BIの塗り分け地図で日本を表示する際のポイント
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地名の表記ゆれに注意
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同じ都道府県名であっても、Power BIが自動的に解釈できないことがあります。例:「東京都」「東京」「Tokyo」「Tokyo-to」など。
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基本的には「都道府県名 + ‘Japan’」のようにデータを整理しておくと、Power BIが正しい場所を判別しやすくなります。
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都道府県コードまたは市区町村コード(自治体コード)の活用
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市区町村レベルで分析する場合、住所表記の揺れが大きく、自動判別でエラーが出やすいため、総務省が定める「市区町村コード」のような整合性のある識別子を利用することをおすすめします。
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地理データの種類を正しく指定
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Power BIで地理情報を扱う場合、データの列を「データのカテゴリ」で「国/地域」「県/州」「郵便番号」など正しい地理カテゴリに設定する必要があります。
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こうすることで、「塗り分け地図」での位置情報が正しくマッピングされます。
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地域名の粒度(都道府県レベル/市区町村レベル)
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都道府県レベルであれば比較的問題が少ないですが、市区町村レベルとなると難易度が上がります。
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マップの精度を優先するのか、可視化の負荷を重視するのかによって、分析粒度を考えるとよいでしょう。
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前提条件と準備するもの
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Power BI Desktop
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本記事ではWindowsアプリとして提供されているPower BI Desktopを使用します。最新バージョンをMicrosoft Storeや公式サイトからダウンロードしておきましょう。
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データセット(地理情報を含むデータ)
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サンプルとして、各都道府県の売上データや人口データを使用するケースを想定します。
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列には少なくとも「都道府県名」と数値指標(例:売上、人口など)が含まれている必要があります。
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インターネット接続
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Power BIの塗り分け地図は、バックグラウンドでBing Maps(マップ情報)を利用するため、インターネット接続が必須です。
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手順1:データをPower BIに取り込む
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Power BI Desktopを起動
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[ホーム] タブ > [データの取得] ボタンをクリック
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データの種類を選択
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CSVファイルやExcelファイル、SQL Serverなど、使用するデータソースに応じて取り込み方法を選びます。
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取り込みたいデータテーブルを選択し、読み込み
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正しくデータプレビューが表示されることを確認しましょう。
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手順2:地名の列を地理カテゴリに設定
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データを確認し、都道府県名の列を探す
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フィールドペイン(データの一覧)から都道府県名の列を右クリック > [データのカテゴリ]
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[都道府県]や[県/州]など、適切な地理カテゴリを選択
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都道府県の場合、Power BI上では「県/州」が一般的に対応します。
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場合によっては「国/地域」列も設定する
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たとえば「Japan」などを別の列で持っている場合は、そこも[国/地域]に設定するとより精度が上がります。
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[データのカテゴリ] に市区町村や郵便番号を設定する場合は注意
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自動的に正しい位置にマッピングされないことがあるため、データ表記と地理カテゴリが一致するかを確認してください。
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手順3:レポートビューで塗り分け地図を作成
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レポートビューを開く
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画面左のアイコンで「レポートビュー」を選択します。
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ビジュアルの選択
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[ビジュアル化] ペインから「塗り分け地図 (Filled Map)」のアイコンを選択します。地図のようなアイコンが目印です。
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地名(都道府県名)の列を「場所(Location)」にドラッグ&ドロップ
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これで地図上に都道府県の範囲がマッピングされます。
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可視化したい数値指標を「色分け (Color saturation)」もしくは「ツールヒント (Tooltip)」へ設定
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「色分け」に売上や人口などの列を入れることで、色の濃淡で値が表示されます。
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「ツールヒント」に値を入れると、地図上でマウスオーバーしたときに詳細な情報を見られます。
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必要に応じて「凡例(Legend)」や「カテゴリ列」なども設定
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例えば、売上の大中小を「カテゴリ」として設定すると、地図上を複数色で塗り分けることができます。
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手順4:日本地図を正しく表示するための設定
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[フォーマット] ペインで地図のスタイルを調整
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「地図のスタイル」を「道路」「グレー スケール」「ダーク」など好みに合わせてカスタマイズできます。
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地図のズーム・パンを調整
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[フォーマット] > [地図コントロール] から「自動ズーム」や「パンのみ」などの設定が可能です。
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日本全域が見やすく表示されるように拡大・縮小を適切に設定しましょう。
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場所の粒度が正しいか確認
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都道府県レベルであれば全47都道府県が表示されているかを確認します。
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一部がグレー表示や抜け落ちている場合は、地理情報(データのカテゴリ設定)や地名の表記ゆれ、スペルミスなどを確認してください。
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フィルターやスライサーの適用
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他の属性(年度や四半期など)をスライサーとして設定し、都道府県別の推移を見たい場合はフィルターを適用することで、インタラクティブにデータを絞り込むことができます。
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都道府県別の人口を例にした実践例
ここでは具体例として、都道府県別の人口データを表示するケースを考えてみます。
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データソース
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「都道府県名」「人口」「年度」などの列を含むExcelファイルを用意。
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都道府県名は日本語で「〇〇県」「〇〇府」「〇〇都」「〇〇道」と正しく記載。
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取り込み
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Power BI DesktopでExcelファイルを読み込み、テーブルとしてインポート。
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カテゴリ設定
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「都道府県名」列を右クリックし、「データのカテゴリ」を「県/州」に指定。
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必要に応じて「Japan」列を作って[国/地域]に設定してもOK。
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塗り分け地図の作成
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レポートビューで塗り分け地図を選択。
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「場所(Location)」に「都道府県名」を配置。
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「色分け(Color saturation)」に「人口」を配置すると、人口の多い地域ほど色が濃く表示される地図が完成。
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視覚的な調整
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フォーマットで地図のテーマを選ぶ。
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タイトルや凡例を見やすいように配置・調整。
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スライサーで年度を切り替えるなどのインタラクティブ機能を追加すると便利。
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うまく表示されない場合のトラブルシューティング
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「場所が曖昧または見つかりません」エラーが出る
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地名の表記が異なっている可能性があります。Power BIが解釈可能な表記を確認し、「都道府県名 + Japan」に統一しましょう。
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正しい形状が表示されない(別の地域としてマッピングされる)
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データのカテゴリ設定が合っていない、あるいはスペルミスの可能性があります。
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たとえば「富山県」を「Toyama prefecture」としている場合、Power BIが正しく日本の富山県と認識しないケースがありますので、統一した表記にしましょう。
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市区町村レベルで色分けがうまくいかない
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市区町村名には重複や同名の市区町村が異なる都道府県に存在するケースがあるため、都道府県名との組み合わせでユニークになるように処理するとよいです。
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さらに精度を求める場合は緯度・経度情報や市区町村コードを利用します。
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応用:GISデータとの連携
Power BIの塗り分け地図はシンプルな可視化を得意としますが、より複雑な地理分析を行う場合はGIS(地理情報システム)との連携が考えられます。
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ArcGIS for Power BI:Power BI向けの拡張機能で、より詳細な地図レイヤーの表示や解析が可能。
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Shape Mapビジュアル:カスタムのシェイプファイル(.shp形式やTopoJSON形式)を使った高度な地図表現もできます。ただしプレビュー機能であり、設定が少し複雑です。
まとめ
Power BIの塗り分け地図を使うことで、日本の都道府県や市区町村を直感的に色分け表示し、地域ごとの数値の違いや傾向を可視化できます。
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データの表記揺れをなくすこと
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「データのカテゴリ」の設定を適切に行うこと
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日本語地名の場合でも英語表記や”Japan”などを補助的に使う
といったポイントに気をつければ、比較的簡単に効果的な地理データの可視化が実現できるでしょう。レポートやプレゼンテーションでも地図があるだけで、視覚的なインパクトが高まり、データの訴求力が上がります。
以上を踏まえて、ぜひPower BIで日本の塗り分け地図を活用し、地域分析やマーケティングなどに役立ててみてください。
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