Power BI でデータを可視化する際に、表形式でデータを見せたい場合は「テーブル」ビジュアルか「マトリックス」ビジュアルを使うことが多いです。中でもマトリックスビジュアルは、複数の階層を設けてデータをグルーピングしながら見せたい時に非常に便利です。テーブルビジュアルとの違いは、複数の行や列の階層を設定してデータをまとめたり、ドリルダウンやドリルアップで階層を切り替えたりできる点にあります。
本記事では、マトリックスビジュアルの行に階層を設定し、効率的に分析を行う方法について解説します。行に階層構造を作ると、データを多角的に捉えられ、またレポートを使う人が欲しい情報を自分で絞り込めるようになります。ぜひ参考にしてみてください。
マトリックスビジュアルとは?
マトリックスビジュアルは、Excel で言うところのピボットテーブルのようなイメージの可視化オブジェクトです。行と列と値を指定して、自由に集計や表示レイアウトを変えられます。大きな特徴は以下のとおりです。
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複数レベルの行・列を設定できる
地域 → 国 → 都道府県 のように、複数のカテゴリ階層を設定できます。 -
階層を展開・折りたたみできる
上記のような階層を設定すると、ユーザー自身がドリルダウンやドリルアップを行うことで、より詳細なデータを確認できたり、大まかな概要を一目で把握できたりします。 -
小計や合計を簡単に表示できる
行や列の各階層で小計を表示できるので、集計値の比較が容易になります。 -
クロス集計が可能
行と列の両方にカテゴリを設定することで、クロス集計の形でデータを表示できます。例えば、行に地域、列に年度を配置して、各年度ごとの地域別売上を瞬時に把握できるようになります。
行に階層を設定するメリット
行に階層を設定すると、以下のようなメリットがあります。
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複数の要素をまとめて分析しやすい
たとえば、「部署 → チーム」「商品カテゴリー → サブカテゴリー」というように階層を設定することで、上位レベルでの傾向把握から、下位レベルでの詳細分析まで一気通貫で行えます。 -
レポートの操作性が向上する
利用者がマトリックス上でドリルダウンをすることで、見たい階層まで掘り下げて分析できます。また、不要な階層は折りたたんでシンプルに表示できるため、見やすいレポートを提供できます。 -
Excel 的な操作感を再現できる
既存の業務で Excel のピボットテーブルに慣れている場合、Power BI のマトリックスも似たような直感的操作でデータを見られるため、抵抗感が少なく導入できる利点があります。
マトリックスの行階層を設定する手順
1. マトリックスビジュアルを配置する
- Power BI Desktop を起動し、目的のレポートまたは新規レポートを開きます。
- 右側の「ビジュアル化」ペインから「マトリックス」アイコンをクリック、またはキャンバス上をクリックしてから「マトリックス」を選択します。
2. フィールドを指定する
マトリックスビジュアルを選択した状態で、右側の「フィールド」ペインに表示されているテーブルやフィールドを使って、以下の場所にドラッグ&ドロップします。
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行:階層を作りたいフィールドを複数指定します
例:地域 → 国 → 都道府県 のように、階層構造になるように上から順に配置 -
列:必要に応じてデータを列方向にも細分化したい場合にフィールドを指定します
例:年度、四半期 など -
値:集計したい指標(売上金額、数量など)を指定します
行に複数フィールドを指定すると、初期状態では上から順番に階層がセットされます。
3. 階層を整理する
行に複数のフィールドを入れると、Power BI が自動的に階層として扱ってくれます。ただし、以下のポイントを確認するとよいでしょう。
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並び順を調整する
行のフィールド欄で上から下へ順番に並ぶ形で階層が決まります。階層の上位 → 下位の順になっているかチェックし、必要に応じてドラッグで入れ替えましょう。 -
データのソート設定を確認する
マトリックスビジュアル上で、フィールド名をクリックしてソート順の昇順・降順を切り替えられます。階層ごとに適切なソートを行うことで、レポートがより見やすくなります。
4. ドリルダウン・ドリルアップの設定
マトリックスビジュアルの行階層を活用する上で重要な機能が「ドリルダウン」と「ドリルアップ」です。これにより、ユーザーが任意で階層の表示レベルを切り替えられます。
- ドリルダウン:上位の階層から下位の階層へ絞り込んで表示を更新
- ドリルアップ:下位の階層から上位の階層に戻る
マトリックスビジュアルを選択すると、上部のビジュアルツールバーにドリル操作用のボタンが表示されます。特定の行をクリックするときにドリルダウンするか、全体を一度に展開・折りたたみするかなどを設定できます。意図した操作ができるよう、ビジュアルツールバーを試してみるとよいでしょう。
5. 小計や合計の表示を調整する
マトリックスビジュアルの**「フォーマット」** ペイン(もしくは「ビジュアル化」ペインの「形式」タブ)を使うと、小計や合計の表示をコントロールできます。特定の階層レベルだけ表示したい、またはすべて表示したいなど、要件に合わせて設定を見直しましょう。
マトリックス行階層の活用例
1. 地域別・製品別売上分析
- 上位レベル:地域(東日本、西日本 など)
- 中位レベル:都道府県
- 下位レベル:市区町村、または店舗
最初は地域単位の売上を把握し、興味のある地域をドリルダウンしていくことで都道府県や店舗レベルの売上を確認できます。
2. 部門・チーム別の実績管理
- 上位レベル:部門
- 下位レベル:チーム
上司やマネージャーが全体の数字を確認しつつ、特定の部門の下位チームだけの実績を深堀りするようなユースケースに適しています。
3. プロダクトカテゴリー分析
- 上位レベル:カテゴリ(食品、雑貨 など)
- 下位レベル:サブカテゴリ(商品群)
プロダクトごとの売上金額や利益率をまとめてから、必要に応じてさらに下位のカテゴリで分析し、改善策のヒントを得られます。
よくあるトラブルと対処法
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階層が思った通りにならない
- フィールドの順番を見直す
- 階層自体がデータモデルで作られている場合、モデル側での階層設定を確認する
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小計が複数階層で重複表示されて見づらい
- フォーマット → 小計/列の合計/行の合計 で必要な小計のみオンにする
- マトリックス全体での合計が不要ならオフにする
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ドリル操作が分かりにくいと言われる
- レポート利用者に使い方を共有する
- ドリルダウン/アップのボタンを常に表示する設定を活用する
- メジャーツールチップを利用して、階層のヒントを表示する
まとめ
Power BI のマトリックスビジュアルで行に階層を設定すると、複数レベルの集計やクロス集計を一元的に管理できるため、分析の視点が広がり、使い手にとっても分かりやすいレポートを作成できます。上位の階層で概要を把握し、必要に応じてドリルダウンで詳細を掘り下げられるため、レポートにアクセスする人が自ら答えを見つけられるインタラクティブな環境を提供できるでしょう。
- 行の階層設定ではフィールドの順番に注意
- ドリル機能を積極的に活用し、ユーザーの操作性を高める
- 小計や合計の表示で見やすさを調整する
といったポイントを押さえて、ぜひ効果的なマトリックスビジュアルを作成してみてください。よりインサイトを得やすいレポートを構築することで、業務の意思決定スピードも上がり、チーム全体の分析力やコミュニケーション向上に大きく貢献するはずです。
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