Power BIを使ってデータを可視化・分析する際、複数のデータテーブルを「結合」したり「追加」したりする操作は非常に重要です。中でも「Append Queries(クエリの追加)」機能は、行を縦方向にくっつけるイメージでデータをまとめるときに使われます。たとえば、月ごとの売上データを集計して1つのテーブルにまとめたり、部署別のデータを1つの大きなテーブルに融合させたりする際に役立ちます。本記事では、Append(行追加)の概念から手順、活用のコツまでをわかりやすく解説します。
1. AppendとMergeの違いを理解しよう
1-1. 行を追加するAppend
- Append Queries は、テーブル同士を「縦方向」に繋げる機能です。
- 例:「1月売上テーブル」と「2月売上テーブル」をまとめて「1〜2月売上テーブル」にする。
- 目的:同じ列構造のデータを一つにまとめ、分析やレポート作成をしやすくする。
1-2. 列を追加するMerge
- Merge Queries は、VLOOKUPのように「列を横方向」に繋げる機能です。
- 例:「売上テーブル」と「顧客リスト」をキー(顧客IDなど)で結合して、顧客情報を付け足す。
- 目的:別々のテーブルが持つ情報をキーとなる列で組み合わせ、豊富な分析軸を作る。
AppendとMergeはよく混同されがちですが、行追加が必要な場合はAppend、列追加が必要な場合はMergeというように使い分けると覚えやすいです。
2. Appendを使うメリット
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データを一元管理しやすい
月ごとや週ごとなど細切れになっているテーブルを一つの大きなテーブルにまとめられます。レポート・ビジュアル化がしやすくなり、管理も楽になります。 -
後処理をまとめて行いやすい
集合した1つのテーブルに対して、不要な列の削除やデータ型の変更などの処理をまとめて行えるので、クエリがシンプルになります。 -
更新が簡単
追加データができるたびにAppendを設定しておけば、データの更新で自動的に新データが反映されます。ExcelファイルやCSVなど、複数ソースを取り込むときに便利です。
3. Appendの具体的な手順
ここでは、Power Queryエディター上での「Append Queries」を用いた基本的な手順を説明します。
3-1. Power Queryエディターを開く
- Power BI Desktopを起動し、「ホーム」タブから**「変換データ」**をクリックしてPower Queryエディターを開きます。
- 既にインポートしたテーブル一覧が左ペインに表示されていることを確認します。
3-2. Appendの操作を選択
- 左ペインから結合したいテーブルのうち、いずれかを選択(アクティブに)します。
- 上部リボンから**「ホーム」** → 「クエリの結合」 → **「クエリの追加(Append Queries)」**を選択します。
- または「クエリの追加」→ **「新しいクエリとして追加」**を選択すると、新しいテーブルとして生成することも可能です。
3-3. Append設定画面で必要なテーブルを指定
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Two tables(2つのテーブル)を追加 する場合:
- 「テーブルを選択」欄で「テーブル1」と「テーブル2」を指定し、OKを押します。
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Three or more tables(3つ以上のテーブル)を追加 する場合:
- 「3つ以上のテーブルを追加する」を選択すると、一覧から複数のテーブルを右側の枠に追加する形で設定可能です。
- 「OK」をクリックすると、指定したテーブルが順番に結合され、1つのテーブルが作成されます。
3-4. 列構造が違う場合の注意
Appendするテーブル同士で列の名前や数が異なると、欠損や空白となる列ができたり、意図しない列が作成されたりします。以下の対策で整合性をとるのがおすすめです。
- 列名の統一
Excelソースであれば事前に同じ名前にそろえる。Power Query内で列名を手動で変更するのも可。 - 不要な列の削除
使わない列はAppend前に削除、あるいはAppend後に削除する。 - データ型の揃え
日付は日付型、数値は小数型・整数型など、事前に揃えておくと後でエラーになりにくい。
3-5. Append後の確認
Appendが完了すると、結合結果がPower Queryエディターの「データプレビュー」画面に表示されます。行数が合っているか、必要な列が揃っているかを確認し、不備があれば修正しましょう。設定が完了したら、リボンから**「閉じて適用」**を選択すればPower BIに戻ります。
4. Append時によくあるトラブルと対処法
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列名が揃っていない問題
- 原因:列名の違い、スペルミスや全角半角のズレなど。
- 対策:事前に列名を修正。Power Query内でも「列の名前を変更」で容易に変更可能。
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データ型の不一致によるエラー
- 原因:複数ソースを取り込む際、日付型とテキスト型が混ざるなど。
- 対策:Append前にデータ型を揃えるか、Append後すぐにデータ型を正規化する。
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必要のない列が表示される
- 原因:一方のテーブルにしか存在しない列がAppend後に余計な列として残る。
- 対策:Append前後で不要列を削除。そもそも使わない列はソース段階で消す、など管理を徹底。
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行数が想定より多すぎたり少なすぎたりする
- 原因:同じデータを二重で読み込んでいる、または一部のソースが未追加。
- 対策:ソースとなるテーブルとAppendの設定対象を確認して重複や漏れを排除する。
5. Appendをさらに活用するためのヒント
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フォルダーからの自動取り込みと組み合わせる
- 毎月Excelファイルを同じフォルダーに格納する運用の場合、Power Queryの「フォルダーからの取得」機能を使って取り込んだ後でAppendを自動的に行うと、ファイルを置くだけでレポートが更新できるワークフローが構築できます。
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Append後に重複行の削除を行う
- 複数ソースの統合で同じレコードが重複する場合は、Power Queryで「行の削除→重複の削除」を使うと簡単にユニークな行だけを残せます。
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クエリの名前をわかりやすく付ける
- Appendで新規作成したテーブルには、「売上_全期間」や「2025年_サマリ」など、あとから見ても内容が推測しやすい名前を付けると管理がしやすくなります。
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Mergeや他の整形ステップとの組み合わせ
- Appendして一つにまとめたあと、さらに別のマスタ情報をMergeで付加したり、行列のピボット変換などで整形しやすくなるメリットがあります。
6. まとめ
- 行追加(Append) は、複数の同じ構造を持つデータを縦に並べて、1つのまとまったテーブルにする機能です。
- テーブルをAppendすることでデータを一元管理でき、分析や可視化の手間を大幅に削減できます。
- 列名やデータ型が異なるとエラーや余計な列が増える原因になるため、事前・事後で整合性をとるのが重要です。
- Appendを活用すると、フォルダーへのファイル追加などの運用と組み合わせて、定型レポートを自動化することも可能です。
「行の追加」と聞くとシンプルに見えますが、複数データソースの管理という観点では非常に強力で柔軟な機能です。正確に設定すれば、これまで複数のExcelファイルを手作業でコピペしていたような作業を、Power Queryの自動処理に置き換えられるため、業務効率が向上します。
ぜひAppend機能を活用して、Power BIでのデータ分析・レポート作成をスピーディーに進めてみてください。
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