3-1. 進捗管理に必要なデータを整理する
まずは何をどこから取得するかを明確にしましょう。
- タスク情報(タスク名、担当者、開始日、終了予定日、ステータス、進捗率、依存関係など)
- 工数や稼働時間の情報(どのタスクに何時間かかったか)
- リスクや課題管理データ(懸念点、課題の発生日・内容、対応状況、担当など)
- コストや予算の情報(必要に応じて、予算対比や追加コストの管理をする場合)
すでにExcelやGoogleスプレッドシートで管理している企業もあれば、タスク管理ツール(例:Trello、Jira、Asanaなど)やプロジェクト管理ソフト(例:Microsoft Project、Wrikeなど)を使っているケースもあるでしょう。ポイントは、必要なデータが分散しているなら、まず統合する仕組み(APIやCSVの出力、SharePointリストへの集約など)を考えることです。ここを明確にすると、Power BIで可視化すべき範囲と連携方法がハッキリします。
3-2. Power BIでデータを取得・整形する
データ取得の方針が定まったら、次はPower BI Desktopを使ってデータを取り込みます。やるべき主な作業は以下のとおりです。
- データソースに接続
- ExcelファイルやCSVの場合は「データの取得」→「Excel」または「テキスト/CSV」を選択
- タスク管理ツールなどにAPIがあれば、Web API接続やODataフィードを活用する
- SharePointリストに登録している場合は、SharePoint Listコネクタを使って直接取り込む
- Power Queryエディターで整形
- 「日付」「文字列」「数値」など、正しいデータ型を設定
- 不要な列の削除、列名の変更、列の分割などを行い、扱いやすい構造にする
- 進捗率の計算式が必要なら、取り込み前にPower Queryで追加列を作成するか、取り込み後にDAX(Data Analysis Expressions)を使って定義する
- 複数のテーブルを関連付ける
- タスクテーブルと担当者テーブル、リスク管理テーブルなどを**リレーション(関係)**でつなぐ
- たとえば「担当者ID」をキーにしてタスク情報と担当者情報を関連付けることで、担当者名や役職、部門などを参照できるようにする
これらの整形処理は一度設定すれば、次回以降は自動で適用されます。つまり、日々や週次で最新データを取り込むだけで同じ処理が走り、レポートが自動更新されるわけです。
3-3. レポート画面を設計する
次は、Power BIの「レポート」画面でグラフやテーブル、ゲージなどのビジュアルを配置し、見やすいダッシュボードを作ります。進捗管理を意識したレイアウト例として、以下の要素が考えられます。
- ガントチャート風ビジュアル
- プロジェクト名、タスク名、開始日、終了予定日、進捗率を横棒で示す
- 遅延が発生しているタスクを色やアイコンで強調表示
- カスタムビジュアルを使うと、本格的なガントチャートに近い表現が可能
- 進捗率サマリー
- プロジェクト全体の進捗率、完了タスク数、未完了タスク数などをカードビジュアルやゲージビジュアルで表示
- たとえば「進捗率 65%(あと35%で目標達成)」とひと目で分かるようにする
- 部門別/担当者別の進捗状況
- 部門や担当者ごとに、タスク数・完了率・遅延件数を棒グラフやドーナツチャートで可視化
- フィルター機能(スライサー)を使って、特定の部門だけを絞り込む、特定のステータス(例:着手前、着手済み、完了)だけを表示するといった操作を可能にする
- リスク・課題一覧テーブル
- 懸念点や障害が発生しているタスクについては、リスク度合い(高・中・低)や対応期限をテーブルで表示
- 担当者やステータス(未対応・対応中・解決済み)ごとに並べ替えたりフィルターできるようにする
- 期日間近タスクのハイライト
- 期限が3日以内に迫っているのに未完了のタスクを自動的に赤文字で表示したり、ドリルスルーで詳細を開く仕組みを組み込む
- Alerter(アラート設定)を活用して、特定のしきい値を超えた場合に通知を飛ばすことも可能
レポートのデザインは、チームやプロジェクトが抱える課題や管理指標に合わせて自由にカスタマイズできます。「どんな情報を誰に届けたいか」を考えつつ作り込むのがポイントです。
3-4. 共有と運用
レポートが完成したら、Power BI Service(クラウド)へ「発行(パブリッシュ)」し、チームメンバーと共有します。
- 閲覧権限の設定:プロジェクトメンバー全員が閲覧できるようにするのか、あるいは特定の管理職だけがアクセスできるようにするのか、細かく権限をコントロールできる
- Teamsとの連携:Microsoft Teamsを導入していれば、TeamsのチャンネルにPower BIタブを追加し、同じ画面を複数人で見ながら議論可能
- 自動更新のスケジュール:日次や週次、または1時間ごとの頻度で更新する設定を行い、常に最新データを反映させる
運用段階では、メンバーのフィードバックや要望を受けながらビジュアルやレイアウトを調整していくことが大切です。たとえば「リスク管理テーブルに新しい指標を追加したい」「期間を日単位ではなく週単位で見たい」といった声が出てきたら、Power Queryやレポートを修正して柔軟に対応できます。
4. Power BI進捗管理ダッシュボードの具体例
ここでは、もう少し具体的なダッシュボード例を挙げてみます。これらはあくまで一例であり、実際のプロジェクトの特性に合わせてカスタマイズしてください。
4-1. 「ガントチャート+ステータス集計」ダッシュボード
- 画面上段
- 全体進捗率ゲージ:完了タスク数と未完了タスク数を背景に、現在の進捗率を大きく表示
- 期日切れタスク数(赤色):締切日を過ぎても未完了のタスクの数を表示し、要注意タスクへのリンクを設置
- 画面中央
- ガントチャート(横方向):各タスクがいつ開始していつ終わるのか、進捗状況が棒で表される。遅延タスクは色を変える
- スライサー(ドロップダウン):プロジェクト名、担当者名、ステータス別など、必要に応じてフィルタリング
- 画面下段
- 担当者別の棒グラフ:担当者ごとにタスク完了率、残りタスク数などを可視化
- リスク管理テーブル:リスクの種類や発生日、対処期限が一覧化され、赤文字やアイコンで緊急性を示す
4-2. 「リソース管理+工数可視化」ダッシュボード
- リソース配分のドーナツチャート
- 担当者が現在抱えているタスク量(合計工数)を表示し、一人に負荷が集中していないかチェックできるように
- 累計工数と予算対比の折れ線グラフ
- プロジェクト全体で、使った工数やコストが当初の見積もりとどれくらい乖離しているかを時系列で可視化
- タスク別・担当者別の工数テーブル
- 過去に実績として登録された作業時間を集計し、どのタスクにどのくらい時間がかかっているか把握
- 予実差異の目安色分け
- タスクの予算工数を超えている場合は赤、ギリギリの場合は黄色、十分余裕がある場合は緑とするなど、即座に異常を発見できる工夫
5. Power BIで進捗管理を行うメリット
5-1. リアルタイムにプロジェクト状況を把握できる
従来のExcel管理だと、更新のタイミングや担当者の作業都合に左右されていました。しかし、Power BI+自動更新なら、担当者がタスク管理ツールやExcelファイルを更新するだけでレポートが最新化されます。これにより、遅延やリスクを早期に察知し、必要な打ち手を打つまでの時間が短縮されます。
5-2. コミュニケーションの質が向上する
チームメンバー全員が同じダッシュボードを見ながら、「どこが問題?」といった議論を進められます。表やテキストベースでは説明しづらい部分も、グラフや色分けなどの視覚効果で共有しやすくなり、コミュニケーションの齟齬を減らせるのが強みです。
5-3. 属人化の解消・システム的な再現性
Excel集計が属人化すると、その担当者が不在の時や異動になった時に大きな混乱を招きます。Power BIのレポートは、一度設定すれば後任者がその設定を引き継いで運用できるため、プロジェクトの進捗管理が個人のノウハウに依存しにくくなります。
5-4. 管理業務の大幅な効率化
たとえば週次レポートを作るために何時間も手作業でExcelを加工していた担当者が、Power BI導入後はほぼ自動で更新されるダッシュボードをちょっと調整するだけで済むようになります。管理部門の業務負荷が減り、より付加価値の高いタスク(分析・改善提案など)に時間を割けるのは大きなメリットです。
6. よくある導入時のハードルと対策
6-1. データ整備に時間がかかる
多くの場合、進捗管理用のデータは複数のシートやツールに分散しており、すぐにPower BIで取り込みできるとは限りません。
- 対策:段階的にデータ連携を進める。まずはExcelやCSVなど、すぐに取得できる部分から開始し、あとで他ツールとのAPI連携を検討する。社内システム管理部門と連携して、なるべく自動化を実現する。
6-2. レポート設計のノウハウ不足
Power BIを初めて触る担当者にとって、DAXやPower Queryの知識、または「どのビジュアルを選ぶと良いか」など、難易度が高く感じるかもしれません。
- 対策:まずは簡易的なダッシュボードから作る。公式チュートリアルやコミュニティ、YouTube動画などでサンプルを参考にする。必要であれば外部コンサルや専門家に助言を仰ぎ、スピード導入を目指すのも賢い方法。
6-3. 社内メンバーの抵抗感
特にExcel歴が長い現場では「新しいツールは面倒」「覚える時間がない」といった抵抗が起こりがち。
- 対策:強制的に切り替えるのではなく、Excelとの併用期間を設けて段階的に移行する。Power BIからExcelへのエクスポートも可能なので、従来の使い方をしながら少しずつ慣れてもらう。
6-4. セキュリティとアクセス管理
クラウドベースで共有するため、「社外に情報が漏れないか」「機密データを扱って大丈夫か」と不安になるケースもあるでしょう。
- 対策:Power BIにはロールレベルセキュリティ(Row-Level Security)やアクセス制御機能が充実しているので、担当者や役職ごとに閲覧できる範囲を細かく設定できる。またAzureやMicrosoft 365のエコシステム内で統合的にセキュリティを運用すれば、セキュリティレベルを高められる。
7. 成功事例:Power BIで進捗管理を導入した企業の声
ここでは、実際にPower BIを使って進捗管理を強化した企業の事例を簡単に紹介します。
7-1. ソフトウェア開発企業A社
- 課題:複数の開発プロジェクトが同時並行で走り、エンジニアのリソース配分や遅延リスクが見えにくかった
- 導入内容:Jiraで管理しているチケットデータをPower BIに取り込み、プロジェクト別・エンジニア別の工数や進捗をダッシュボード化
- 成果:
- 毎週の進捗報告資料を作る作業がほぼゼロに
- リソースが不足しているプロジェクトを早期に発見し、追加メンバーを柔軟にアサイン可能に
- 経営層にもリアルタイムで状況が伝わり、意思決定が素早くなった
7-2. 建設業B社
- 課題:大規模工事のスケジュール管理がExcel中心で、請負業者ごとに進捗報告のフォーマットが異なり、集約に時間がかかりすぎた
- 導入内容:施工管理システムから日次の工程進捗と作業人数を集約し、Power BIでガントチャート風ダッシュボードを作成
- 成果:
- 工事の遅延要因を早期に把握でき、協力会社との連携がスムーズに
- 現場写真や作業報告をOneDriveにアップ→Power BI上で関連付ける形にし、「どこで問題が起きているか」をビジュアルな形で共有
- 現場監督の負荷が減り、工程調整の質が向上した
8. Power BI導入・運用でお困りなら、ぜひご相談ください
Power BIを使った進捗管理は、プロジェクト成功率の向上だけでなく、メンバーの業務負荷軽減や社内コミュニケーションの質向上にも大きく貢献します。ただし、導入にあたってはデータ連携の整備やレポート設計、ユーザー研修などのステップが必要で、「社内だけでスムーズに進められるか不安」という声も少なくありません。
当社では、Power BIを中心としたデータ可視化コンサルティングを数多く手がけてまいりました。
- 既存ツールとの連携設計:ExcelやProject、タスク管理ツール、SharePointリストなど、さまざまなソースを自動で取り込む仕組みづくり
- 進捗管理ダッシュボードの設計支援:ガントチャート、リソース負荷、遅延アラートなど、貴社の業務フローに合わせてカスタマイズ
- 運用定着・ユーザー教育:DAXやPower Queryの基礎トレーニング、管理者向けワークショップ、日々の問い合わせ対応
- セキュリティ/アクセス制御の設定:プロジェクトメンバーごとの閲覧範囲やロール設定で機密情報を守りながら効率的に可視化
「Power BI 進捗管理を取り入れてプロジェクトの成功確度を高めたい」「手作業による進捗報告をなくし、リアルタイム可視化に移行したい」という方は、ぜひ下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
- 無料相談会やオンラインセミナーにて、現場の課題をヒアリングしながら最適なソリューションをご提案いたします。
- 小規模プロジェクトから大規模導入まで対応可能。社内のITリテラシーや既存システム環境を踏まえ、最適なアプローチでサポートいたします。
9. まとめ:Power BIで進捗管理を革新し、プロジェクトを成功に導こう
- 進捗管理の課題
- 情報分散、リアルタイム性の欠如、可視化不足、属人化
- 納期遅延や品質問題、チームの疲弊につながるリスク大
- Power BIがもたらす効果
- 様々なデータソースを一元化し、自動更新+リアルタイム可視化
- ドリルダウンやアラート設定で問題箇所を早期発見・迅速対応
- Excelだけでは実現しづらいインタラクティブなガントチャートやレポート
- チーム全員が同じダッシュボードを共有し、コミュニケーションの透明度UP
- 導入ステップ
- 必要なデータを整理し、進捗情報を統合(Excel/CSV/API/SharePointなど)
- Power BI Desktopで取得・整形し、ガントチャート風やリスク管理テーブル、担当者別進捗などを設計
- Power BI Serviceで公開し、管理者やメンバーと権限設定して共有
- フィードバックをもとに改良し、自動更新・アラート機能を活用して安定運用へ
進捗管理を“見える化”して全員が常に最新の状況を理解できるようになると、プロジェクト運営の質は大きく向上します。納期や品質確保だけでなく、メンバーのモチベーション維持、管理部門の負荷軽減、経営判断のスピード化など、多方面にメリットが波及するでしょう。
しかし、実際にPower BIを本格活用するには、データ連携の整備やレポート構築、社内定着などの課題が伴います。そこで、当社が培ってきたコンサルティングノウハウがお役に立てるはずです。進捗管理の悩みを解消し、プロジェクトを成功へ導くために、ぜひ一度ご相談ください。
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